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焦点:米中間選挙、民主党の上院奪還は「絵に描いた餅」か
8月29日、11月に予定する米国の中間選挙において民主党が上院の過半数を奪還する可能性について、ある政治アナリストは「ほぼ不可能な道のり」と評している。他はさらに悲観的だ。写真はテキサス州の民主党上院議員候補ベト・オルーク氏。18日撮影(2018年 ロイター/Loren Elliott)
Tim Reid
[シカゴ 29日 ロイター] - 11月に実施される米国の中間選挙において民主党が上院の過半数を奪還する可能性について、ある政治アナリストは「ほぼ不可能な道のり」と評している。他はさらに悲観的だ。
可能性は低いにもかかわらず、今月シカゴに集まった同党の戦略担当者らは強気だ。トランプ米大統領の元側近をめぐる司法トラブルが深刻化し、共和党が腐敗スキャンダルに巻き込まれているため、民主党のチャンスが拡大する可能性がある、と言うのだ。
とはいえ、その道のりが険しいことに変わりはない。
11月6日の中間選挙で争われるのは、下院の435議席すべてと上院100議席のうち35、そして50州のうち36州の州知事職だ。
今回の改選で民主党が防衛すべき上院の現有議席は24で、そのうち10議席は2016年にトランプ氏が勝利を収めた州であり、一部は大差での勝利だった。上院での過半数奪還には、2議席増やす必要がある。
民主党が過半数を獲得すれば、トランプ大統領の政策アジェンダの多くを、阻止もしくは停滞させることが可能となり、政権に対する議会の監視や調査を強化することができる。将来的に、連邦最高裁にさらに空席が生じた場合でも保守派の指名を困難にする効果も生まれる。
無党派の政治アナリスト、スチュー・ローゼンバーグ氏は、民主党による上院過半数の奪還は「ほぼ不可能な道のり」だと評する。ただし、共和党が直面している逆風を考慮すれば、「上院選挙の情勢が動く可能性はある」と付け加えた。
シカゴで開催された民主党全国委員会の夏季集会でインタビューに応じた10数名の党戦略担当者や党員、そして立候補予定者らは、2014年以来失っている上院での優位を取り返すための同党の方針や戦略について語った。
<注目州はどこか>
民主党関係者によれば、今年、特に困難な戦いになるのはウェストバージニア、インディアナ、ノースダコタ、モンタナ、ミズーリの5州だという。いずれも2016年にトランプ氏が勝利を収めた州であり、このうち1議席でも失えば、上院奪還の展望は非常に暗くなる。
各州における世論調査の結果は、民主党に希望を与えている。ノースダコタ、インディアナ、ミズーリでは五分五分の情勢という結果が出ているためだ。
トランプ氏が20ポイント差をつけて勝利したモンタナにおける最近の世論調査では、現職の民主党ジョン・テスター上院議員が平均5ポイント差でリードしている。また、同じくトランプ氏が40ポイント差で勝ったウェストバージニアでは、民主党のジョー・マンチン上院議員が僅差でリードしている状況だ。
「共和党にとって、最大のターゲットとなるのは、明らかにこれら5州だ」と語るのは、バージニア大学政治学センターの無党派アナリスト、ジェフリー・スキリー氏。「上院の情勢については見方が2つある。民主党にとってはひどく不利だが、その反面、議席を守るという意味では最高の年だ」
上院の選挙対策に従事している共和党担当者は、トランプ人気が引き続き高い州で再選を目指す民主党議員は頭を悩ませているはずだ、と主張する。「全国レベルで民主党が左派寄りになっていることにより、これらの州の有権者が離反する一方で、ただでさえ脆弱な現職はダメージを受けている」
フロリダ州の上院議席をめぐる争いは一部の民主党関係者を憂慮させている。世論調査によれば、現職の民主党ビル・ネルソン上院議員と、これに挑戦する共和党リック・スコット州知事の接戦となっている。フロリダ・アトランティック大学が21日に発表した世論調査の結果では、スコット氏がネルソン氏を6ポイントリードしている。
トランプ氏が勝利した州すべてで議席を死守することに必死になる一方で、民主党は、戦略担当者が重要な奪還目標として掲げるアリゾナ、ネバダ両州にも力を注いでいる。
アリゾナ州では、現職の共和党ジェフ・フレーク上院議員が引退を決めており、共和党では、3人の候補のあいだで指名を争う予備投票が28日実施され、マーサ・マクサリー下院議員が勝利した。民主党側では世論調査で優位だったカイルステン・シネマ下院議員が勝ち、女性同士の戦いとなる。
ネバダ州のディーン・ヘラー上院議員は、共和党現職のなかで最も再選が危ういと言われている。民主党の戦略担当者は、同議員が医療費負担適正化法、いわゆる「オバマケア」の一部廃止に賛成したことは、年金生活者が多く、医療へのアクセスが大きな問題になっている州において、プラスに働いていると述べている。
民主党が上院で1議席上回るためには、現有議席をすべて守ったうえで、ネバダ、アリゾナ両州を奪う必要がある。
<戦力の集中投下>
民主党の2つのスーパーPAC(政治資金団体)である「プライオリティズUSA」と「シネート・マジョリティPAC」は、少なくとも総計で1億2000万ドル(約134億円)をアリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタでの宣伝費に投入している。
スーパーPACは特定候補・政党の選挙戦とは独立して行動しなければならないが、金額に制約なく資金を集め、支出することができる。
民主党上院選挙対策委員会の独立支出部門は、アリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタの各州で当面のCM枠として3000万ドル分を確保している。
また民主党関係者によれば、同党とその外部グループは、テネシー、テキサス両州でも、見込み薄ながらも議席奪還をめざして資金を投じているという。
最近の世論調査によれば、テキサス州では現職の共和党テッド・クルーズ上院議員に対し、挑戦者である民主党ベト・オルーク氏が2─4ポイントという僅差で追走している。
また現職引退を受けたオープンレースとなっているテネシー州では、人気の高い穏健派の民主党フィル・ブレッドセン知事が、共和党のマーシャ・ブラックバーン下院議員とつばぜり合いを演じているという調査結果になっている。
<医療、税金、政治腐敗>
民主党内での調査によれば、中間選挙で民主党候補にとって有利な争点となるのは、医療制度と、共和党による減税政策だという。有権者の中には、この減税政策が富裕な個人・企業に対する「ばら撒き」だという見方があるためだ。
民主党の戦略担当者であるカレン・フィニー氏はシカゴでの会合の際、「医療制度のような重要テーマは、有権者にとって本当に深刻だ。共和党は減税政策でポイントを稼げると考えていたが、逆に弱点となっている」と話している。「われわれはこうした主要な争点を巡るトレンドを有利に使っている」
今月、トランプ大統領の元選対本部長ポール・マナフォート氏が有罪評決を受け、元顧問弁護士マイケル・コーエン氏が罪状を認める証言を行ったことを受けて、民主党全国委員会のトム・ペリッツ会長は、上院選挙のなかで民主党がトランプ大統領をめぐる法的なトラブルを強調していくことを明らかにした。
コーエン氏は脱税、銀行詐欺、選挙資金に関する違反などの連邦犯罪の告発について罪状を認めた。同氏はトランプ氏と性的関係があったと主張する2人の女性に対して口止め料を払うよう、トランプ氏本人から指示を受け、その支払いは2016年の大統領選挙を考慮したものである、と証言している。
これらの女性との関係を否認しているトランプ大統領は、コーエン氏には個人的な資産から支払いを行っており、選挙戦を有利に進めるためではなく、個人的な問題を解決するために支払ったものだと主張している。
「この共和党政権に見られる腐敗の文化は手に負えなくなっている」と、ペリッツ氏は民主党の会合で語った。
*情報を追加しました。
(翻訳:エァクレーレン)