ニュース速報

ワールド

焦点:米中間選挙、民主党の上院奪還は「絵に描いた餅」か

2018年09月01日(土)07時22分

 8月29日、11月に予定する米国の中間選挙において民主党が上院の過半数を奪還する可能性について、ある政治アナリストは「ほぼ不可能な道のり」と評している。他はさらに悲観的だ。写真はテキサス州の民主党上院議員候補ベト・オルーク氏。18日撮影(2018年 ロイター/Loren Elliott)

Tim Reid

[シカゴ 29日 ロイター] - 11月に実施される米国の中間選挙において民主党が上院の過半数を奪還する可能性について、ある政治アナリストは「ほぼ不可能な道のり」と評している。他はさらに悲観的だ。

可能性は低いにもかかわらず、今月シカゴに集まった同党の戦略担当者らは強気だ。トランプ米大統領の元側近をめぐる司法トラブルが深刻化し、共和党が腐敗スキャンダルに巻き込まれているため、民主党のチャンスが拡大する可能性がある、と言うのだ。

とはいえ、その道のりが険しいことに変わりはない。

11月6日の中間選挙で争われるのは、下院の435議席すべてと上院100議席のうち35、そして50州のうち36州の州知事職だ。

今回の改選で民主党が防衛すべき上院の現有議席は24で、そのうち10議席は2016年にトランプ氏が勝利を収めた州であり、一部は大差での勝利だった。上院での過半数奪還には、2議席増やす必要がある。

民主党が過半数を獲得すれば、トランプ大統領の政策アジェンダの多くを、阻止もしくは停滞させることが可能となり、政権に対する議会の監視や調査を強化することができる。将来的に、連邦最高裁にさらに空席が生じた場合でも保守派の指名を困難にする効果も生まれる。

無党派の政治アナリスト、スチュー・ローゼンバーグ氏は、民主党による上院過半数の奪還は「ほぼ不可能な道のり」だと評する。ただし、共和党が直面している逆風を考慮すれば、「上院選挙の情勢が動く可能性はある」と付け加えた。

シカゴで開催された民主党全国委員会の夏季集会でインタビューに応じた10数名の党戦略担当者や党員、そして立候補予定者らは、2014年以来失っている上院での優位を取り返すための同党の方針や戦略について語った。

<注目州はどこか>

民主党関係者によれば、今年、特に困難な戦いになるのはウェストバージニア、インディアナ、ノースダコタ、モンタナ、ミズーリの5州だという。いずれも2016年にトランプ氏が勝利を収めた州であり、このうち1議席でも失えば、上院奪還の展望は非常に暗くなる。

各州における世論調査の結果は、民主党に希望を与えている。ノースダコタ、インディアナ、ミズーリでは五分五分の情勢という結果が出ているためだ。

トランプ氏が20ポイント差をつけて勝利したモンタナにおける最近の世論調査では、現職の民主党ジョン・テスター上院議員が平均5ポイント差でリードしている。また、同じくトランプ氏が40ポイント差で勝ったウェストバージニアでは、民主党のジョー・マンチン上院議員が僅差でリードしている状況だ。

「共和党にとって、最大のターゲットとなるのは、明らかにこれら5州だ」と語るのは、バージニア大学政治学センターの無党派アナリスト、ジェフリー・スキリー氏。「上院の情勢については見方が2つある。民主党にとってはひどく不利だが、その反面、議席を守るという意味では最高の年だ」

上院の選挙対策に従事している共和党担当者は、トランプ人気が引き続き高い州で再選を目指す民主党議員は頭を悩ませているはずだ、と主張する。「全国レベルで民主党が左派寄りになっていることにより、これらの州の有権者が離反する一方で、ただでさえ脆弱な現職はダメージを受けている」

フロリダ州の上院議席をめぐる争いは一部の民主党関係者を憂慮させている。世論調査によれば、現職の民主党ビル・ネルソン上院議員と、これに挑戦する共和党リック・スコット州知事の接戦となっている。フロリダ・アトランティック大学が21日に発表した世論調査の結果では、スコット氏がネルソン氏を6ポイントリードしている。

トランプ氏が勝利した州すべてで議席を死守することに必死になる一方で、民主党は、戦略担当者が重要な奪還目標として掲げるアリゾナ、ネバダ両州にも力を注いでいる。

アリゾナ州では、現職の共和党ジェフ・フレーク上院議員が引退を決めており、共和党では、3人の候補のあいだで指名を争う予備投票が28日実施され、マーサ・マクサリー下院議員が勝利した。民主党側では世論調査で優位だったカイルステン・シネマ下院議員が勝ち、女性同士の戦いとなる。

ネバダ州のディーン・ヘラー上院議員は、共和党現職のなかで最も再選が危ういと言われている。民主党の戦略担当者は、同議員が医療費負担適正化法、いわゆる「オバマケア」の一部廃止に賛成したことは、年金生活者が多く、医療へのアクセスが大きな問題になっている州において、プラスに働いていると述べている。

民主党が上院で1議席上回るためには、現有議席をすべて守ったうえで、ネバダ、アリゾナ両州を奪う必要がある。

<戦力の集中投下>

民主党の2つのスーパーPAC(政治資金団体)である「プライオリティズUSA」と「シネート・マジョリティPAC」は、少なくとも総計で1億2000万ドル(約134億円)をアリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタでの宣伝費に投入している。

スーパーPACは特定候補・政党の選挙戦とは独立して行動しなければならないが、金額に制約なく資金を集め、支出することができる。

民主党上院選挙対策委員会の独立支出部門は、アリゾナ、ネバダ、ウェストバージニア、インディアナ、モンタナ、ノースダコタの各州で当面のCM枠として3000万ドル分を確保している。

また民主党関係者によれば、同党とその外部グループは、テネシー、テキサス両州でも、見込み薄ながらも議席奪還をめざして資金を投じているという。

最近の世論調査によれば、テキサス州では現職の共和党テッド・クルーズ上院議員に対し、挑戦者である民主党ベト・オルーク氏が2─4ポイントという僅差で追走している。

また現職引退を受けたオープンレースとなっているテネシー州では、人気の高い穏健派の民主党フィル・ブレッドセン知事が、共和党のマーシャ・ブラックバーン下院議員とつばぜり合いを演じているという調査結果になっている。

<医療、税金、政治腐敗>

民主党内での調査によれば、中間選挙で民主党候補にとって有利な争点となるのは、医療制度と、共和党による減税政策だという。有権者の中には、この減税政策が富裕な個人・企業に対する「ばら撒き」だという見方があるためだ。

民主党の戦略担当者であるカレン・フィニー氏はシカゴでの会合の際、「医療制度のような重要テーマは、有権者にとって本当に深刻だ。共和党は減税政策でポイントを稼げると考えていたが、逆に弱点となっている」と話している。「われわれはこうした主要な争点を巡るトレンドを有利に使っている」

今月、トランプ大統領の元選対本部長ポール・マナフォート氏が有罪評決を受け、元顧問弁護士マイケル・コーエン氏が罪状を認める証言を行ったことを受けて、民主党全国委員会のトム・ペリッツ会長は、上院選挙のなかで民主党がトランプ大統領をめぐる法的なトラブルを強調していくことを明らかにした。

コーエン氏は脱税、銀行詐欺、選挙資金に関する違反などの連邦犯罪の告発について罪状を認めた。同氏はトランプ氏と性的関係があったと主張する2人の女性に対して口止め料を払うよう、トランプ氏本人から指示を受け、その支払いは2016年の大統領選挙を考慮したものである、と証言している。

これらの女性との関係を否認しているトランプ大統領は、コーエン氏には個人的な資産から支払いを行っており、選挙戦を有利に進めるためではなく、個人的な問題を解決するために支払ったものだと主張している。

「この共和党政権に見られる腐敗の文化は手に負えなくなっている」と、ペリッツ氏は民主党の会合で語った。

*情報を追加しました。

(翻訳:エァクレーレン)

ロイター
Copyright (C) 2018 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ヒズボラ、レバノン政府による武装解除第2段階の4カ

ワールド

トランプ氏、日本の対米投資第1号発表 3州でガス発

ワールド

英王子創設のアースショット賞、26年表彰式はムンバ

ワールド

英右派政党リフォームUK、中銀と予算責任局の改革を
MAGAZINE
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
特集:ウクライナ戦争4年 苦境のロシア
2026年2月24日号(2/17発売)

帰還兵の暴力、ドローンの攻撃、止まらないインフレ。国民は疲弊しプーチンの足元も揺らぐ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    オートミール中心の食事がメタボ解消の特効薬に
  • 2
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」でソフトウェア株総崩れの中、投資マネーの新潮流は?
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 5
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 6
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 7
    極超音速ミサイルが通常戦力化する世界では、グリー…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    アメリカが警告を発する「チクングニアウイルス」と…
  • 10
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発される中国のスパイ、今度はギリシャで御用
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    【銘柄】マイクロソフトの株価が暴落...「AI懸念」で…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    「ヒンメルならそうした」...コスプレイヤーが消火活…
  • 8
    なぜ「あと1レップ」が筋肉を壊すのか...「高速パワ…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    「目のやり場に困る...」アカデミー会場を席巻したス…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中