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マクロスコープ:中東混迷に警戒感、3月短観 中堅中小に影響じわり

2026年04月01日(水)13時21分

写真は日本国旗とオフィスビル。2016年2月、都内で撮影。REUTERS/Toru Hanai

Yusuke Ogawa

[東‌京 1日 ロイター] - 日銀が1日発表した3月の企業短期経済観‌測調査(短観)では、国内企業の先行きへの警戒感が浮き彫りにな​った。中東情勢の緊迫化による円安進行や原油価格の高騰は仕入れ価格の上昇を通じ幅広い業種の経営を圧迫するが、特⁠に、コスト高への耐性が低い規模の​小さい企業には影響が表れやすい。

「事業規模によって景況感に差が出ている。中堅中小の方が慎重姿勢が強いようだ」。明治安田総合研究所の森田幸大・主任エコノミストはこう語る。業況判断指数(DI)は景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値だが、大企業製造業は1ポイント改善の17だった一方で、中小企業非⁠製造業は16と、前回を1ポイント下回った。

先行きのDIについては、大企業全産業は6ポイント悪化の21。中堅企業全産業は14と、現状から9ポイントの悪化を見込む。経営体力に劣る中堅中小にとって、⁠原油・資​材価格の上昇の影響は甚大だ。

今回の調査は、調査表の発送日は2月26日、回収基準日は3月12日だった。米国とイスラエルによるイラン攻撃の開始直後に回答した企業も少なくないため、「原油高の影響は十分に織り込まれていないと考えられる。今後、中堅中小をはじめ国内企業の景況感は一段と悪化する恐れがある」(森田氏)という。

三菱総合研究所の田中康就氏も「下請法改正による中小受託取引適正化法(取適法)施行に伴い、中小の価格転嫁が想定以上に進んでいる」と⁠述べた上で「とはいえ大企業に比べると、(原油高に伴う)収益の下げ圧力は大‌きいのではないか。今の情勢が続けば、間違いなく悪化方向に向かう」との見方を示した。

中小企業の経済団体⁠である日⁠本商工会議所が3月31日に公表した早期景気観測(LOBO調査)では、3月の業況DIは全産業でマイナス20.0となり前月に比べ3.2ポイント悪化した。建設業では、塗料などの資材価格の上昇が収益の足かせとなった。機械や鉄鋼業でも採算が悪化したほか、包装関連の卸売業者からは「さらに石油価格が高騰した場合には業界の混乱は避けられない」との悲鳴が上がっている。

燃料高に伴い消費‌者の節約志向も強まっており、飲食料品の需要が減少。一部の小売店からは「低価格帯の​商品の売‌上構成が高まっている」といった声⁠が聞かれた。

<中国レアアース規制も重荷に>

た​だでさえ、中小は人手不足が深刻化しており、25年の全国の企業倒産件数は2年連続で1万件を超えた。東京商工リサーチによると、東日本大震災の影響が残る13年以来、12年ぶりの高水準だった。足元では日中関係の悪化に伴う中国人観光客の減少が影を落とす中、中東危機が直撃。さらに中国によるレアアースの輸出規制への懸念も広がっている。

中小製造業の労組が加盟する「ものづくり産業労働組合(JAM)」‌の安河内賢弘会長は3月の記者会見で「レアアースを手に入れようとすると、値段が2倍も3倍も上がっていて、全くそのコストが合わない。コスト分の価格転嫁も全く進んでない」と厳​しい状況を訴えた。

国際希土類工業協会(REIA)の顧問を務める三菱UFJリサ⁠ーチ&コンサルティングの清水孝太郎主席研究員は「大企業は保険として備蓄を積み増しているケースが多いが、在庫を自前で持てない中小は苦しんでいる」と指摘する。

今年の春闘では、大手企業で満額回答が相次ぎ、2次集計の平均賃上​げ率は5.12%と昨年に続き高水準となった。しかし、4-5月に本格化する中小企業の交渉は不透明感が強い。もともと中小は人材獲得を目的として、業績改善を伴わない「防衛的な賃上げ」が多かった。原料高などによって賃上げの広がりが鈍れば、政府・日銀が描く「賃金と物価の好循環」の定着はさらに遠のきそうだ。

(小川悠介 編集:橋本浩)

ロイター
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