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アングル:AI相場で広がる物色、日本勢に追い風 日経平均にリスクも

2025年11月13日(木)18時54分

写真は人工知能(AI)の文字とロボットハンドのイメージ。2023年6月撮影。REUTERS/Dado Ruvic

Hiroko Hamada

[東京 13日 ロイター] - AI(人工知能)相場が新局面を迎えている。これまでは米ハイテク大手の投資が脚光を浴びてきたが、その収益モデルの確立が途上にある中で、投資の果実を先に得るのはハード(物理的な機器)分野との見方が出ている。製造業を中心に日本勢にとっては追い風とみられるが、物色の裾野がさらに拡大する中で、関連銘柄の調整時には相場全体を押し下げるリスクも生まれている。

<関連株の反応に明暗>

企業の中間決算シーズンを通過する中で、市場のAI関連株への反応に明暗が生じている。業績予想の上方修正を発表した東京エレクトロンやアドバンテストは素直に好感する動きとなった一方、ソフトバンクグループは売りで反応した。

松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、物色の矛先が「AIに『投資する側』から、その『投資の恩恵を受ける側』に移ってきているのではないか」との見方を示す。 

AI関連の投資側については、収益性に懐疑的な見方がくすぶっていた。ソーシャルメディア大手の米メタ・プラットフォームズは10月30日、過去最大の社債発行で資金調達すると明らかにする中で株価が急落した。  

「ゴールドラッシュで本当に儲けたのは採掘者ではなく、シャベル(などの道具)を売った人だった」という市場のアナロジーを、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは足元のAI相場になぞらえる。 

データセンター投資を受けて「エヌビディアやアドバンテストは儲かるが、AIサービス会社がすべて儲かるかは別の話」だとして、投資家が今後、冷静な見方になれば、物色の対象は「投資する側」と「投資の恩恵を受ける側」とで2極化していくと井出氏はみている。  

<インフラ関連も物色>

こうした中、物色の矛先は半導体製造に直接関わる企業だけでなく、データセンター向けのインフラや半導体素材などに関連した銘柄群にも及んでいる。アドバンテストやフジクラといった「先行」銘柄群の株価収益率(PER)はすでに高まっているが、足元で空調、送電、建設にも買いの手が広がる。

複雑な計算が必要な生成AI向けのデータセンターには安定した電力供給や強力な冷却設備が必要となる。送電網設備の更新需要が堅調なことを背景に業績見通しを引き上げた日立製作所の年初来パフォーマンスは35%超高と、日経平均(同28%超高)を上回る。データセンター向けの送配電設備事業を手掛ける富士電機も業績予想を上方修正、株価は同29%超高となっている。

空調大手のダイキン工業は海外のデータセンター向け機器が好調で、業績予想を引き上げた。

電気工事を手掛けるサブコン銘柄にも物色が向かっている。関西電力などから受注を受けるきんでんは好決算を公表後、大幅高となった。

立花証券のアナリスト・島田嘉一氏は「データセンターの建設に適しているとされる東北地方で設備工事業を手掛けるユアテックも注目される」と指摘する。東北電力がデータセンター誘致に動いており、「実際に誘致が実現すれば(送電工事を)受注するとの期待につながるのではないか」(島田氏)という。   時価総額が相対的に小さい銘柄にも資金は向かっている。プラスチック主軸の高機能デバイス事業を手掛けるエンプラスの株価は年初来92%上昇している。岡三証券のシニアストラテジスト・大下莉奈氏は「AI需要の高まりで、足元では半導体関連が伸びていると言及する部材メーカーが目立つ」と話している。   こうした物色の広がりについて、岩井コスモ証券の投資調査部部長・有沢正一氏は「『期待』だけではなく業績に基づいた『実弾』的な買いが入っている」との見方を示す。「日本の主力株はAIのインフラに絡んでいる企業も多い。AIは息の長いテーマで材料も豊富なため、循環的に買われる下地はできている」(GCIアセットマネジメントのポートフォリオマネージャー・池田隆政氏)との声が聞かれる。

<反転リスクの高まりも>  もっとも、今年の年明けにみられたディープシーク・ショックのように、技術進歩によりAIへの巨額投資が不要になるとの見方が浮上すれば「調整のきっかけになりかねない」(池田氏)との指摘がある。

日経平均構成銘柄のうち、関連があると目される銘柄群の構成比(ウエート)を積み上げると、日経平均全体の約4割を占める。三菱UFJアセットマネジメント・エグゼクティブ・ファンド・マネージャーの石金淳氏は「AI投資の裾野が広がっているだけに、(AIを手掛かりにした)調整時は揃って売られるリスクがあり、日経平均を押し下げそうだ」と話している。

ロイター
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