ニュース速報

ビジネス

EU・ECB、金融安定強調で懸念払拭に腐心 首脳会議2日目

2023年03月25日(土)04時16分

 3月24日、欧州中央銀行(ECB)は24日、スイスと米国の銀行が招いた市場の混乱を踏まえ、欧州連合(EU)首脳にユーロ圏の銀行の安全性を強調するとともに、域内共通の預金保険制度推進を呼びかける見通し。写真はECBの看板。フランクフルトで昨年7月撮影(2023年 ロイター/Wolfgang Rattay)

[ブリュッセル 24日 ロイター] - 欧州連合(EU)首脳と欧州中央銀行(ECB)は24日、銀行セクターに関する統一見解を示し、域内金融機関は十分な資本と流動性を有していると述べ、市場の動揺の鎮静化に努めた。

EU首脳はこの日まで開催した首脳会議後に声明を発表。「域内の銀行セクターは強固な資本と流動性を持ち、耐性がある」と指摘した。

しかしこの日もドイツ銀行やUBSを始めとする銀行株は急落。市場の懸念払拭には至らなかった。

オランダのルッテ首相は、ユーロ圏の銀行セクターは10年前よりもはるかに強固になっているとし、域内で新たな銀行危機が発生する可能性は極めて低いと述べた。

ドイツのショルツ首相も、国内最大手のドイツ銀に対する市場の懸念払拭に努め、「ドイツ銀は、ビジネスモデルを根本的に刷新し再編成した。非常に収益性の高い銀行であり、懸念する理由はない」と語った。

欧州中央銀行(ECB)は首脳会議で、スイスと米国の銀行が招いた市場の混乱を踏まえ、欧州連合(EU)首脳にユーロ圏の銀行の安全性を強調するとともに、域内共通の預金保険制度推進を呼びかけた。複数の関係者が明らかにした。

EU首脳会談の2日目の討議では財政・債務ルールの変更を含む経済問題が主な議題となり、クレディ・スイスと米シリコンバレー銀行の問題が域内銀行システムに与える影響を巡る懸念が焦点だった。

関係筋によると、ラガルドECB総裁はEU首脳らに対し、ユーロ圏の銀行は資本状態が良好で流動性が高いため耐性がある上、必要な場合はECBが流動性を提供できると語った。

また、「世界金融危機後に国際的に合意された規制改革を全ての銀行セクターに適用しているため、ユーロ圏の銀行セクターは強固だ」とし、ECBの「ツールキット」は、必要な場合にシステムに流動性を供給するため完全に準備が整っていると言明した。

その上で、「最近の出来事は、規制基準を継続的に改善することがいかに重要であるかを思い起こさせる」と指摘。2012年に開始された銀行同盟プロジェクトは、依然として域内共通の銀行預金保護制度である欧州預金保険スキーム(EDIS)の導入にまでは至っていないため、この完成に向けた着実な進展を呼びかけた。

一方、金融セクターの混乱下でもインフレ抑制に向けたECBの利上げを擁護し、インフレ対策と銀行セクターの安定化の間にトレードオフの関係はないと指摘。「ECBは両方のリスクに対処する手段を有している」と発言した。

フランスのマクロン大統領もこれを支持。記者団に対し、金利の正常化は銀行システムにとって脅威ではないと述べた。

ロイター
Copyright (C) 2023 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日経平均は小幅続伸、半導体関連小じっかり 積極売買

ワールド

韓国国民年金、新たなドル調達手段を検討 ドル建て債

ワールド

アサド政権崩壊1年、行方不明者の調査進まず 家族の

ビジネス

豪中銀が金利据え置き、利上げリスクに言及 緩和サイ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中