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為替の急激かつ投機的な動き、望ましくないとの声=9月日銀会合要旨

2022年11月02日(水)10時07分

 11月2日、日銀が9月21—22日に開いた金融政策決定会合で、為替相場について、ある委員が「最近の為替相場の急激かつ投機的な動きは、日本経済にとって望ましくない」と述べていたことが分かった。写真は都内で2020年5月撮影(2022年 ロイター/Kim Kyung-Hoon )

[東京 2日 ロイター] - 日銀が9月21—22日に開いた金融政策決定会合で、為替相場について、ある委員が「最近の為替相場の急激かつ投機的な動きは、日本経済にとって望ましくない」と述べていたことが分かった。イールドカーブ・コントロール(YCC)の下、日銀は10年金利を0.25%で抑え込む政策を続けているが、供給制約や行動制限の緩和で景気が上向けば緩和効果がさらに強まっていくとの指摘もあった。

日銀が2日、決定会合の議事要旨を公表した。急速な円安を受け、政府・日銀は9月22日の決定会合直後に円買い介入を実施した。複数の委員は「金融政策は為替相場を直接のターゲットとするものではない」と話し、「現在の経済・物価情勢を踏まえると金融緩和を継続する必要があることを丁寧に説明していくべきだ」と主張した。

日銀は同会合で金融政策の現状維持を全員一致で決めた。1人の委員から「目先の物価が一段と伸びを高めたとしても、予想物価上昇率が低位にとどまり、賃金などへの波及が限られるもとでは、粘り強く金融緩和を継続することが必要」との意見が出た。この委員は、日本で根強い、物価が上がりにくいという社会的な規範が変化し、物価上昇を上回る賃金上昇が持続する中で経済の好循環が働くことが重要だと述べた。

YCCの運営を巡り、決定会合では1人の委員が、供給制約や行動制限の緩和で景気に影響を及ぼさない「自然利子率」が再び上昇すれば、「緩和効果がさらに強まっていく可能性がある」と述べた。一方で、市場機能の低下懸念が債券市場から出ていることを踏まえ、引き続き市場の状況をしっかり確認・検証する必要があるとの指摘も出た。

決定会合では米国をはじめとする海外経済について警戒感が示された。複数の委員が、インフレ率高騰に直面した先進国の中央銀行が大幅な利上げを継続していることで「世界経済を下押しし始めている」との見方を示した。

米国経済について、1人の委員は米国の品目別物価上昇率の分布を見ると、インフレ予想の抑制力が弱まっている可能性があり「さらに踏み込んだ金融引き締めが必要となる可能性がある」と語った。米国の住宅関連市場では「既に利上げの影響がみられているが、そのすそ野は広く、比較的影響が長く続くため、注意深く見ていく必要がある」(別の1人の委員)との指摘も出ていた。

原材料高・円安を受け、企業による値上げの動きが広がっている。複数の委員が「企業の価格設定行動に変化が生じつつあるのではないか」と述べた。その半面で、複数の委員は「価格転嫁の動き広がっているが、これが1回限りのものであれば、来年以降の物価上昇率はかえって弱まる可能性もある」と指摘した。

(和田崇彦)

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