ニュース速報

ビジネス

アングル:原油高が企業業績圧迫、織り込み不足で米株下落も

2022年06月23日(木)15時44分

[ニューヨーク 23日 ロイター] - 市場関係者の間では、米企業業績が原油高でさらに打撃を受け、株価が一段と下落するのではないかとの懸念が浮上している。

小売り大手のターゲット、ウォルマートはすでに原油高で利益が圧迫されていると警告。一部投資家は、企業業績のアナリスト予想に原油高の影響が十分に反映されていない可能性があり、業績予想の下方修正が始まれば、株価が下落する恐れがあると懸念している。

グレンミードのプライベートウェルス部門最高投資責任者、ジェイソン・プライド氏は「企業業績は表面的には好調を維持しているが、エネルギー価格の高騰で年内に利益率が低下し始める可能性がある」と指摘。

ネッド・デービス・リサーチによると、原油価格が10ドル上昇するごとに世界の域内総生産(GDP)は0.3%目減りする。

ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティチュートのジョン・ラフォージ氏の推計では、原油価格が2月以降に約30ドル上昇したことで世界経済は1%押し下げられ、米国は今年景気後退に陥る可能性が高いという。

同氏は「(景気後退は)避けられない。コモディティーが好調なときは株式市場はほぼ常に弱気相場入りしている。利益率が低下するためだ」と述べた。

ウォルマートは先月、燃料費が予想を1億6000万ドル上回ったと表明。ターゲットは通年の輸送・運送費の予想を10億ドル引き上げた。

だが、アナリストが燃料費上昇を業績予想に反映している形跡は乏しい。リフィニティブのデータによると、企業が発表した第2・四半期の業績予想のうち、市場予想を下回ったのは全体の約61%。第1・四半期の68.7%を大幅に下回っている。

リフィニティブによると、S&P総合500種指数採用企業の第2・四半期決算は全体で5.4%の増益となる見通しだが、エネルギー企業を除くと2.2%の減益となる。

投資家は原油の高止まりを予想している。BofAグローバル・リサーチの調査によると、世界の投資家の間で最も人気のある取引は原油などコモディティーの買いだ。

ブラックロックのアナリストも、業績のコンセンサス予想にはエネルギー価格が成長を圧迫するリスクが反映されていないようだと指摘している。このため「リスク資産が下落しても安値拾いの買いを入れる理由とはならず、今後さらにボラティリティーが拡大すると予想している」という。

通常、原油高は景気後退や消費習慣の変化を通じて需要減少につながるが、BofAヨーロッパのコモディティーストラテジスト、フランシスコ・ブランチ氏によると、対ロシア制裁が続く限り原油価格が下落する可能性は低い。

同氏は「たとえ世界が景気後退に陥っても、来年の北海ブレントの平均価格は1バレル=75ドル以上になる可能性がある」と述べた。

ナティクシス・インベストメント・マネジャーズ・ソリューションズのポートフォリオストラテジスト、ギャレット・メルソン氏は、原油高が近く利益全体を押し下げるとの見通しを示した。

ロイター
Copyright (C) 2022 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米当局が欠陥調査、テスラ「モデル3」の緊急ドアロッ

ワールド

米東部4州の知事、洋上風力発電事業停止の撤回求める

ワールド

24年の羽田衝突事故、運輸安全委が異例の2回目経過

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体が技術供与 推論分野強
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中