ニュース速報

ビジネス

焦点:インド自動車市場、コロナで色あせた外国勢の成長期待

2021年06月25日(金)15時29分

 6月18日、 外国の主要自動車メーカーがインド市場に対して持っていた成長期待が、急速に色あせつつある。ムンバイで2019年8月撮影(2021年 ロイター/Francis Mascarenhas)

[ニューデリー 18日 ロイター] - 外国の主要自動車メーカーがインド市場に対して持っていた成長期待が、急速に色あせつつある。インド国内で新型コロナウイルス感染第2波が猛威を振るい、政府が追加経済対策を打ち出す余地も限られ、回復が中国や米国から大きく後れを取る可能性があるためだ。

昨年、10年近く続いた販売台数の伸びが消失する事態に直面した各メーカーは、今年こそ需要が持ち直すと見込んでいる。しかしその動きを主導するのは外国勢が市場を牛耳る高級車ではなく、マルチ・スズキやライバルの現代自動車など小型で手ごろな価格の車種になる公算が大きい、と業界幹部やアナリストは話す。

フォード、ホンダ、日産、フォルクスワーゲン(VW)とその傘下のシュコダなど外国勢は、インド工場の稼働率と販売が当初の見通しを大幅に下回っており、将来の投資について厳しい判断を迫られている。

ある西側メーカーの幹部は「生き残りが掛かっている。インドにとどまるかどうかは、他の海外市場の費用便益分析次第だ」と述べ、見通しが好転しなければインド進出のメーカーの数が減少するとの見方を示した。

既にゼネラル・モーターズ(GM)とハーレー・ダビッドソンは昨年、インド市場から撤退した。

フォード・インディアのマネジングディレクター、アヌラグ・メフロトラ氏は「インドは自動車産業と経済の長期的な成長見通しが不透明で、その結果、設備稼働率などに深刻な問題が生じている」と述べた。

メフロトラ氏は、新型コロナのパンデミックで「素早い対応と難しい判断」が求められると断りつつ、フォードは既に取り組みを表明したインドの新プランの詳細は明らかにしていない。

VWは2018年にインド戦略を見直し、シュコダを軸に展開することを決定。2025年までに5%のシェアを握るために12億ドル(約1300億円)を投資する計画に変わりはないとしており、手始めに年内にスポーツタイプ多目的車(SUV)2車種を投入する。

現地法人シュコダ・オート・フォルクスワーゲン・インディアの広報担当は、インド市場でグループの地位を確立し、強化し続けるのが目標だと述べた。

ホンダと日産は電子メールでコメントを求めたが応じなかった。

<遅れる回復>

インドは10年前には、13億人の人口を抱える市場が成熟し、2020年までに米国と中国に次ぐ世界第3位の自動車市場に成長するとの見方が広がっていた。

しかし実際には、数年前に大型乗用車とSUVへの課税が強化され、相対的に外国メーカーが大きな打撃を被ったほか、19年の景気減速やパンデミックが重なり、世界での順位は5位に甘んじている。

コンサルタント会社JATOダイナミクスのラビ・ブハティア氏によると、インド消費者の購買力は依然として西側諸国に比べてはるかに低く、自動車の加重平均価格は米国の3万8000ドルに対してわずか1万ドルにすぎない。

もちろんアナリストが指摘するように、人口1000人当たりの自動車保有が27台程度にとどまるインドは、長期的な潜在成長力を秘めていることに変わりはない。

コンサルタント会社LMCオートモーティブは、昨年235万台とほぼ10年ぶりの水準に落ち込んだインドの自動車販売台数が今年は前年比35%増の317万台に回復すると見込んでいる。

しかし、この数字は世界トップクラスの市場に比べるとかなり見劣りする。LMCの予想では、中国の今年の販売台数は7%増の2200万台、米国は21%増の1350万台に達するという。

中国と米国はいずれもパンデミックが過去の話になったのに対して、インドはまだ感染第2波からの回復途上で、ワクチン接種を完全に終えた人も成人全体の5%程度しかいない。

インドは財政に過剰な圧力が掛かっており、投資適格級の格付けを失う恐れもある。そのため米国や中国は追加経済対策が自動車市場の回復を支えるのと異なり、インドでは追加対策の余地は限られる。

<さまざまなハードル>

インド市場の見通しが厳しくなった時期と、外国メーカーがより成熟した、利益率の高い市場で電気自動車(EV)や新技術への投資を迫られているタイミングも重なった。

インド自動車工業会(SIAM)によると、フォード、ホンダ、シュコダ・VWは3月31日までの年度に国内販売台数が20-28%減少した。これはマルチ・スズキや現代の2倍以上の落ち込みだ。

またSAIMのデータに基づくと、一部外国メーカーの工場は設備稼働率が30%を割り込んでおり、メーカーの当初目標とはかけ離れた数字になっている。

日産はインドの自動車市場でのシェアを2020年までに5%とする目標を立てていたが、実際には1%以下。ホンダは18年のロイターの取材で、主要なプレーヤーになると明言してそのためには10%のシェアが必要だと説明していたが、シェアは当時の5%から3%に下がり、国内2カ所の工場の1つを閉鎖した。

インドに20億ドル余りを投資したフォードはシェアが2%弱にとどまっている。

LMCのアマール・マスター氏によると、地元メーカーと張り合うには新商品を安定的に投入することが欠かせず、そのために投資を増やす必要がある。

マスター氏は「品揃えの更新が遅れている自動車メーカーは激しい競争に直面し、販売やシェアが落ち込むリスクがより大きくなる」と指摘。フォード、日産、ホンダなどは今のところ次世代の強力な商品が見当たらないと付け加えた。

2人の業界幹部の話では、インドでは輸出政策に透明性を欠いていることや他の規制面のハードルのせいで外国メーカーにとって問題がより複雑になっている。

インドは昨年、フォードやVWなどインド国内での販売よりも輸出が多いメーカーにとって重要な輸出促進策を撤廃。今も新たな制度がまとまっていない。

輸出国はインドとの間で自由貿易協定(FTA)が存在せず、タイやベトナムなどFTAがある国と比べてコスト面で不利にもなる、と業界幹部は解説する。

フォード・インディアの元役員のビナイ・ピパルサニア氏は、「インドは、外国自動車メーカーの規模や投資の拡大を阻むリスクを打ち消す必要がある」と訴えた。

(Aditi Shah記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

ニュース速報

ワールド

東京都、新たに3058人のコロナ感染者 日曜では過

ビジネス

アングル:欧米で広がる金融商品「バズらせ」戦略、標

ワールド

東京都、新たに4058人のコロナ感染者を確認 初の

ビジネス

アングル:コロナ再拡大に大洪水、世界の供給網「限界

MAGAZINE

特集:モデルナの秘密

2021年8月 3日号(7/27発売)

コロナワクチンを高速開発したベンチャー企業モデルナの正体とmRNA治療薬の可能性

人気ランキング

  • 1

    東京五輪、中国人バド選手が韓国ペアとの試合中に「罵倒」連発で騒動に

  • 2

    いくら太陽光発電所を作っても、日本の脱炭素政策が成功しない訳

  • 3

    ドラァグクイーンと子供のふれあいイベントが抗議殺到で中止に、殺害予告も

  • 4

    福山雅治ほどの温厚な人を怒らせた「3つのスイッチ」とは

  • 5

    1匹だけみにくい子猫、病気と思ったら「オオカミ」だ…

  • 6

    パリ五輪ロゴの出会い系アプリ激似説がネットで再燃

  • 7

    「お尻がキラキラ光るクモ」ではなく、無数の赤ちゃ…

  • 8

    今度は米西部でバッタが大発生、繰り返される厄災に…

  • 9

    女子陸上短距離ジョイナーの「伝説と疑惑の世界記録…

  • 10

    コーチもいないオーストリアの数学者が金メダル、自…

  • 1

    東京五輪、中国人バド選手が韓国ペアとの試合中に「罵倒」連発で騒動に

  • 2

    1匹だけみにくい子猫、病気と思ったら「オオカミ」だった

  • 3

    いくら太陽光発電所を作っても、日本の脱炭素政策が成功しない訳

  • 4

    「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手…

  • 5

    チベットの溶ける氷河から、約1万5000年前の未知のウ…

  • 6

    競泳界の「鉄の女」が水の上を歩く奇跡の一枚

  • 7

    「無駄に性的」罰金覚悟でビキニ拒否のノルウェー女…

  • 8

    東京五輪、視聴率苦戦の根本理由

  • 9

    東京五輪は始まる前から失敗していた

  • 10

    ドラァグクイーンと子供のふれあいイベントが抗議殺…

  • 1

    東京五輪、中国人バド選手が韓国ペアとの試合中に「罵倒」連発で騒動に

  • 2

    1匹だけみにくい子猫、病気と思ったら「オオカミ」だった

  • 3

    加害と向き合えない小山田圭吾君へ──二度と君の音楽は聴きません。元いじめられっ子からの手紙

  • 4

    20万円で売られた14歳日本人少女のその後 ──「中世に…

  • 5

    「無駄に性的」罰金覚悟でビキニ拒否のノルウェー女…

  • 6

    「1日2個、カットしてスプーンで食べるだけ」 メンタル…

  • 7

    「競技用ショーツが短すぎて不適切」英パラ代表選手…

  • 8

    人間のオモチャにされたイルカ死ぬ──野生動物に触る…

  • 9

    韓国で、日本製バイクの販売が伸びている理由

  • 10

    いくら太陽光発電所を作っても、日本の脱炭素政策が…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

投資特集 2021年に始める資産形成 英会話特集 Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
Wonderful Story
メンバーシップ登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら
World Voice

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中