ニュース速報

ビジネス

焦点:投資家がアジア国債保有見直し、相対的に安全な市場に資金シフト

2021年05月08日(土)08時15分

 5月6日、債券市場では、米国債など主要国債で先月起きた幅広い売りにいったん歯止めが掛かった。2020年2月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

[東京/上海 6日 ロイター] - 債券市場では、米国債など主要国債で先月起きた幅広い売りにいったん歯止めが掛かった。外国人投資家はアジア諸国の国債保有状況を見直すための時間を手に入れたことになり、インドネシアやインドなど高リスクの国から、中国などより安全な国へと資金を移す動きが広がっている。

昨年は中国、インド、インドネシアなどの国に、高い利回りを求める外国人投資家の資金が大量に流れ込んだ。

しかし新型コロナウイルスのパンデミックから経済が立ち直るペースは各国でばらつきが出ている上に、ドル高、米連邦準備理事会(FRB)の低金利政策の持続性を疑問視する見方などが重なり、資産運用会社は市場の安全性に差が出ていると見なさざるを得なくなっている。

しかも、米国債利回りが第1・四半期に2016年末以来の急上昇を示し、相対的に利回りが低いアジアの一部債券市場は投資妙味が薄れてしまった。

T・ロウ・プライス(香港)の新興市場債券ポートフォリオマネジャー、レオナード・クワン氏は「アジア域内にはタイ、シンガポール、マレーシアのように、米国との比較で今では魅力が低下した国がある。こうした市場からは(資金が)流出し、米国債に向かう公算が大きいだろう」と述べた。

中国の公式統計によると、外国人投資家の中国のソブリン債保有高は3月に89億5000万元(13億8000万ドル)減少し、2年余りで初めて売り越しに転じた。ただ、中国は実質利回りの水準が高く、世界貿易の回復と密接につながっているため、資産運用会社は中国に対して強気な姿勢を維持している。

クワン氏は、中国市場が国内要因で動き、海外の投資や金利サイクルとの相関度が低いとの理由から、中国債への投資を続けている。

インドスエズ・ウェルス・マネジメント(香港)のアジア資本市場ヘッド、デービス・ホール氏は、日本やスイス、欧州の投資家にとって、中国国債は為替リスクを埋めるだけの魅力的な利回りを備えており、買いを入れるのに「まったく悩む必要はない」と話した。

人民元は物価調整後の実質利回りが3%余り。一方、日本とスイスの実質利回りは1%を切り、ドイツと米国の国債は実質利回りがマイナス化している。

信用の伸びを抑える中国の取り組みは懸念材料だが、資産運用会社は中国人民銀行(中央銀行)が利上げを避け、債券価格に与えるリスクがより小さい、他の手段を使って信用膨張を食い止めようとすると予想している。

インドネシアとインドは昨年、投資家からの人気が高かったが、状況は様変わりした。資産運用会社の間では量的金融緩和(QE)や通貨安への懸念が広がっており、両国について資金配分の大規模な見直しが起きそうだ。

インドネシアの外国人投資家の売買動向は2月が11億ドル、3月が14億ドルのいずれも売り越しとなり、過去1年間で最大の資金流出となった。インド国債は2月と3月が18億ドルの売り越しで、こちらもほぼ1年ぶりの大規模な流出を記録した。

インドネシアは10年物国債の利回りが6.5%と妙味がある投資先だが、経済回復は不均一で、ペースも遅いと見込まれるほか、財政赤字が高水準で通貨安が進んでいることから、投資家は懸念を強めている。インドネシアルピアは今年に入ってから対ドルで2.8%下げた。

インドは中国、インドネシアほど債券投資家の人気はない。コロナ感染が急拡大し、経済見通しのリスクもさらに大きくなっている。

UBSアセット・マネジメント(香港)のヘイデン・ブリスコ氏によると、新興国の中央銀行はパンデミック時に低く設定した金利の引き上げを検討しており、投資家は敬遠しそうだという。

ブリスコ氏は「足元では幾つかまずいことが起きている。米国の金利ボラティリティーやドル高の動きなどがそれで、新興国への資金配分に関してそれなりの慎重さが必要な時期にきている」と述べた。

米国の金利ボラティリティーは4月末に落ち着き始めたとはいえ、まだ高止まりしており、投資家は資金配分や、国債からリスクを埋めるだけの利益が得られるかどうかを見極める際に各市場の「固有性」をより重視するようになる可能性がある。

ブリスコ氏は「こうしたボラティリティーを埋めるのに充分なキャリーがあるのかという緊張感は常にある」と話した。

(Stanley White記者、Andrew Galbraith記者)

ロイター
Copyright (C) 2021 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ファーストリテ、26年8月期業績・配当予想を上方修

ワールド

米国の脱退、「正式な手続き必要」と太平洋環境保護機

ビジネス

日経平均は大幅続落、一時900円超安 AI株に利益

ビジネス

セブン&アイHD、3―11月期営業益3.1%増 通
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 5
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 6
    マドゥロ拘束作戦で暗躍した偵察機「RQ-170」...米空…
  • 7
    日本も他人事じゃない? デジタル先進国デンマークが…
  • 8
    公開されたエプスタイン疑惑の写真に「元大統領」が…
  • 9
    衛星画像で見る「消し炭」の軍事施設...ベネズエラで…
  • 10
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 1
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチン、その先は袋小路か
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 10
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中