ニュース速報

ビジネス

アングル:欧州航空、搭乗前検査で「陰性オンリー」便に期待 

2020年09月28日(月)12時30分

 9月23日、欧州の航空各社は、妊娠検査薬並みのスピードで新型コロナウイルス感染の有無をチェックできるタイプの抗原検査に、乗客数回復の期待をかけている。直前の検査で陰性と判断された乗客だけに搭乗を認めることで、閉鎖空間での空の旅に安心感を取り戻す狙いだ。写真はマスクを着けた、独ルフトハンザ航空の従業員。6月17日、フランクフルト国際空港で撮影(2020年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[チューリヒ/ミラノ 23日 ロイター] - 欧州の航空各社は、妊娠検査薬並みのスピードで新型コロナウイルス感染の有無をチェックできるタイプの抗原検査に、乗客数回復の期待をかけている。直前の検査で陰性と判断された乗客だけに搭乗を認めることで、閉鎖空間での空の旅に安心感を取り戻す狙いだ。

政府による救済策を受け入れているドイツのルフトハンザ航空は現在、抗原検査の採用についてスイスの医薬品大手ロシュと協議中で、来月の実現を目指している。関係筋2人が明らかにした。

イタリアのアリタリア航空はロイターに対し、検査で陰性だった乗客のみ搭乗を認める対象に、ミラノ発ローマ行きの2便を23日から追加することを明らかにした。既にローマ発ミラノ行きの2便でこうした措置を適用している。

検査は空港で保健当局者が行い、料金はチケット代に含まれる。アリタリアは、抗原検査の安全性が確認されて人気を得られれば、他の国内便へも適用を拡大し、その後は国際便にも広げたいとしている。

この抗原検査はPCR検査と異なり、機器による処理を必要としない。妊娠検査のように約15分で結果を出すことができる。

ただ、鼻の粘膜を綿棒でぬぐうという不快な作業が必要な上、「偽陰性」が出る確率がPCR検査より高い。

抗原検査キットの種類は増えており、米アボット・ラボラトリーズ、米ベクトン・ディッキンソン&カンパニー、ロシュなどが手がけている。ロシュのキットは、韓国のSDバイオセンサーの製品をリブランド(商標やデザインを変更)している。

欧州では新型コロナ感染者数が再び増えているが、航空各社は各国政府に対し、一律に移動規制をかける代わりに抗原検査の活用を認めるよう迫っている。

国際航空運送協会(IATA)のトップは22日、非医療スタッフが行える迅速な抗原検査が、数週間中に1回7ドルで入手可能になるとの見通しを示した。

<陰性オンリー便>

抗原検査には欠点もあるが、航空会社は人々に安s心してもらえるバランスを見い出せると期待している。

ロシュの研究開発マネジャー、クリスチャン・ポーラス氏は「特定の検査時点で、陽性、陰性のいずれであるかに信頼性を与えるものだ」と話す。

「PCR検査が最適な基準であるのは、これまでと変わらない。従って、何かしら疑問点が残ったり、抗原検査の結果が陰性でも発熱などの症状が見受けられたりする場合には、確認のための検査を確実に行うようにする」と述べた。

アリタリアは先週、ローマ発ミラノ行き路線で「COVID―19(新型コロナウイルス感染症)検査済み便」を導入し、23日から対象便を拡大する。抗原検査結果が陰性の乗客しか搭乗できない。

同社広報は「今のところ陽性の乗客は発見されていない」と言う。多くの乗客は、搭乗前夜に抗原検査を受けることを選ぶという。

同社は10月半ばに状況を分析する計画だが、既に対象便を拡大できると見込んでいる。「まずは、この実験の状況を見極めなければならない」と広報は話した。

イタリアでは既に、外国からの入国者に対して空港でSDバイオセンサーのキットによる抗原検査を行っている。

<隔離よりまし>

ルフトハンザの広報によると、同社はまず、客室乗務員を対象に抗原検査を実施する予定だ。また、同社幹部はファーストクラスとビジネスクラスの乗客も、同検査を受けられるようにする可能性があるとした。

「人を隔離するより、こうした検査の方が良い選択肢だとわれわれは考えている」と広報担当者は話す。

ドイツは10月から、空港以外でも介護施設など幅広い場所で抗原検査を活用することを視野に入れている。

当局は依然、PCR検査に比べて抗原検査の感度が劣ることを懸念している。しかし、経済活動をある程度正常化させることを目指すなら、完璧を求める余り「まあまあ良い」状態を排除すべきではない、との声もある。

ドイツのシュパーン保健相は「(抗原検査は)十分良い」と述べ、「大量に」導入する方針を示した。バイエルン州は既に1000万キットを発注済みだ。

(John Miller記者、Emilio Parodi記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

訂正-ゼレンスキー氏、和平案巡り国民投票実施の用意

ワールド

イスラエル、ソマリランドを初の独立国家として正式承

ワールド

ベネズエラ、大統領選の抗議活動後に拘束の99人釈放

ワールド

ゼレンスキー氏、トランプ氏と28日会談 領土など和
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 6
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 7
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    赤ちゃんの「足の動き」に違和感を覚えた母親、動画…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中