ニュース速報

ビジネス

まもなく日銀総裁会見、注目ポイントを先取り

2020年07月15日(水)12時55分

 黒田東彦日銀総裁は7月15日午後3時半から予定されている会見で、現在のコロナ対応策の効果や展望リポートで示されたデータに基づいて日本経済の先行きに言及するとみられる。都内の日銀前で5月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

田巻一彦

[東京 15日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は15日午後3時半から予定されている会見で、現在のコロナ対応策の効果や展望リポートで示されたデータに基づいて日本経済の先行きに言及するとみられる。そこから、「ウイズ・コロナ」時代の金融政策の行方や枠組みの修正などについて、ヒントが出るかもしれない。注目すべき発言内容を以下に列挙した。

1.展望リポートで示したデータの裏にある日銀の本音

・日銀は2020年度後半から21年度にかけて、日本経済が緩やかに回復していくシナリオを示した。しかし、リスクも数多く存在する中で、黒田総裁がどんなリスクを警戒し、そのシナリオでは日本経済がどの程度下振れすると見ているのか注目したい。

・物価の見通しは22年度も2%に達していない。物価目標との整合性をどのように説明するのか、未達が続く中で、どのようなケースになれば追加緩和を検討するのか。そのヒントになりそうな総裁の発言が重要性を持つことになりそうだ。

2.信用緩和政策の効果と今後

・日銀の総額90兆円に上る新型コロナ対応特別オペや20兆円規模の社債・CP買入の効果で、CP・社債市場は平穏さを維持している。今回の政策対応の中で、この信用緩和政策の効果がどれくらいの比重を持ったのか、この先に一段と社債金利を押し下げる選択肢があるのかなどについて、黒田総裁がどう発言をするのか大きなポイントになる。

・年間12兆円のETF買い入れ枠をさらに引き上げることに、合理性があるのかどうか。黒田総裁の「表現方法」によっては、日銀の先々の政策に対し、市場の思惑を呼びそうだ。

3.YCC政策と超長期金利の動向

・日銀は長短金利操作付き量的・質的金融緩和(YCC)政策を継続しているが、超長期金利の水準やイールドカーブ全体のイメージを特定した形で表現していない。政府の国債発行増が今後も予想される中で、超長期金利の「適正な水準」について、黒田総裁がどのような表現で言及するのか、市場関係者の大きな関心事となっている。

4.金融政策の枠組みはどうなるのか

・政府の国債増発とYCCの枠組みは「相性」がよいといわれている。この枠組みの持続性について、黒田総裁が自らどのような表現で評価を下すのか、BOJウオッチャーの一部では関心を呼んでいる。

・コロナ対応がひと段落した後に、現在の緊急時対応をどのようにフェードアウトしていくイメージなのか、それとも緊急時対応をしばらく継続するのか。そのヒントに黒田総裁が言及すれば、大きなポイントとして意識されそうだ。

・米連邦準備理事会(FRB)が選択肢の1つとして検討を進めているとみられるフォワードガイダンス(FG)の強化に関し、黒田総裁が何らかの発言をするかどうか。日本でのFG強化の行方について、情報発信があるかどうかも注目されそうだ。

*第1段落目の分を微調整して再送します。

(田巻一彦)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:好調スタートの米年末商戦、水面下で消費揺

ワールド

トルコ、ロ・ウにエネインフラの安全確保要請 黒海で

ワールド

マクロン氏、中国主席と会談 地政学・貿易・環境で協

ワールド

トルコ、ロシア産ガス契約を1年延長 対米投資も検討
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与し、名誉ある「キーパー」に任命された日本人
  • 3
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 4
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    【クイズ】日本で2番目に「ホタテの漁獲量」が多い県…
  • 7
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 8
    台湾に最も近い在日米軍嘉手納基地で滑走路の迅速復…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    見えないと思った? ウィリアム皇太子夫妻、「車内の…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 7
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 8
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中