ニュース速報

ビジネス

アングル:香港国安法を投資家が歓迎、「本土資金」に期待

2020年07月02日(木)14時30分

7月2日、香港国家安全維持法(国安法)が6月30日夜に施行され、香港の街角では翌1日、抗議活動が広がった。写真は1日、香港で、路上に散らばった中国機(2020年 ロイター/Tyrone Siu)

[上海/香港 1日 ロイター] - 香港国家安全維持法(国安法)が6月30日夜に施行され、香港の街角では翌1日、抗議活動が広がった。しかし同じ香港のトレーディングルームでは、中国による香港包囲に投資家らが拍手を送っている。

香港国安法の施行によって香港の自由が損なわれると懸念する人々もいる。しかし香港市場に上場する中国企業は増え、中国本土からの資金流入は拡大し、世界第2位の経済大国である中国本土と香港の金融的なつながりも一層強化されると、市場関係者は期待している。

「中国企業が香港で上場を続ける限り、パーティーは続く」と言うのは、ゲオ・セキュリティーズ(香港)のフランシス・ルン最高経営責任者(CEO)だ。

「金融業界人は金もうけのことしか頭にない。何があろうとも、金もうけという人生唯一の目的以外には目が向かない」。ルン氏によると、金融業界は「民主主義の闘志たち」とは別の「パラレルワールドに住んでいる」という。

この分断は香港で広がる所得格差を反映しているのかもしれない。また香港が本土経済への依存を強めている実態も浮き彫りにしている。

香港の司法および政治上の独立性に疑問が生じる結果、海外駐在員や外資系企業が香港を離れるようなら、いずれ投資家の見解も変わるかもしれない。実際、4─6月期はこうした懸念を反映し、香港株ハンセン指数<.HSI>の上昇率は3.5%と、上海総合指数<.SSEC>の8.5%や、MSCIアジア株(日本を除く)指数<.MIAPJ0000PUS>の18%を下回った。

米国は香港国安法の施行を受け、法律によって中国に制裁を科す方針だ。しかし大半のアナリストによると、制裁の影響は限定的で、むしろ中国本土との経済関係が強まって香港に恩恵が及ぶとみられる。

サクソ・キャピタル・マーケッツ(シンガポール)のケイ・バン・ピーターセン氏は「もっと面白いのは、米国の制裁によって中国企業が香港で上場せざるを得なくなっていることだ。この流れは続くとみられ、香港の株式市場と証券取引所にとって驚異的な現象になるだろう」と語る。

<中国による包囲>

CIMBプライベート・バンク(シンガポール)のエコノミスト、ソン・セン・ウン氏は、中国大手企業によるセカンダリー・リスティング(他市場に上場済みの企業による香港での上場)の波が押し寄せ、巨額の資金が香港に流れ込んでいると説明。「金もうけの機会ほど人を引き付けるものはない。だから、香港国安法によって何が起こるか不透明ではあるが、カネの魅力が一番の磁力であるのは変わらない」と語った。

香港の株式時価総額に占める中国企業の割合は既に73%に達しており、香港市場で昨年実施された新規株式公開(IPO)では、資金調達額の82%を中国関連企業のIPOが占めた。

中国の資産運用会社の共同創設者、マーク・ドン氏は「長い目で見れば、香港国安法の施行によって香港は安定性を予見しやすくなる」と語った。

(Samuel Shen記者、Noah Sin記者)

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中