ニュース速報

ビジネス

シンガポール中銀、予想通り金融政策を緩和 深刻な景気後退に備え

2020年03月30日(月)15時36分

シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)は30日、市場の予想通り、金融政策を緩和した。写真は2017年6月、シンガポールで撮影(2020年 ロイター/Darren Whiteside)

[シンガポール 30日 ロイター] - シンガポール金融管理局(MAS、中央銀行)は30日、市場の予想通り、金融政策を緩和した。新型コロナウイルスの世界的大流行で同国経済は大幅なリセッション(景気後退)に陥ると予想されている。

MASは、シンガポールドルの名目実効為替レート(NEER)の許容変動幅について、同変動幅の中間点をやや下回る現行水準を起点に、年間の上昇率をゼロ%とする政策を採用するとした。

MASは政策金利ではなく、通貨バスケットに対するNEERの傾斜、中央値、許容変動幅を政策手段としており、アナリストは、今回は傾斜と中央値を引き下げ、変動幅は据え置いたと指摘する。

MASは、今回の措置はシンガポールドルの「安定」をもたらすとしたうえで、新型コロナが経済にもたらす影響を緩和する主要な手段は財政政策との見解を示した。

今月のロイター調査に回答した9人のエコノミスト全員が金融緩和を予想していた。

メイバンクの証券エコノミストは「今回の変更はMASがこれまで講じた中で最も積極的な政策変更に思える。MASは現状、マイナス成長とデフレを見込んでいる」と述べた。

MASは政策変更にあわせ、今年の総合・コアインフレ率見通しをマイナス1%─ゼロ%に下方修正した。

先週発表された第1・四半期の国内総生産(GDP)速報値は前年比2.2%減と、2009年の金融危機以来の大幅なマイナス成長だった。政府は今年の成長率見通しをマイナス4─マイナス1%に下方修正した。

MASは新たな政策の枠組みは、貿易額をもとに加重して算出される実効為替レートに安定をもたらし、財政政策が新型コロナの世界的流行による経済への影響を和らげる主要な手段になると説明した。

キャピタル・エコノミクスは今回の措置は景気悪化に対する中銀の政策の限界を浮き彫りにしており、今後数カ月に追加の緩和策は見込めないと分析。

ただ、他のエコノミストは、MASは必要ならば追加緩和を行う余地を確保したと指摘。MASの次回会合は10月に予定されている。

シンガポールドルはMASの発表を受けて一時0.5%上昇し、1米ドル=1.4215シンガポールドルを付けた。シンガポールドルは年初から6%近く下落していたが、MASの措置によって一段の下落余地は狭まったと市場では受けとめられた。

バンク・オブ・シンガポールの為替アナリストは「シンガポールドルの安定に関して強いメッセージを出すことが全体の狙いだった」と指摘。

「過去にそのような動きがあった際は、一連の緩和策の前触れと理解されたが、今回は、打撃を和らげるための財政政策により大きな重点が置かれている。為替レートの目的はむしろ、多少の圧力を解放することにある」とした。

*内容を追加して再送します。

ロイター
Copyright (C) 2020 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

医薬品メーカー、米国で350品目値上げ トランプ氏

ビジネス

中国、人民元バスケットのウエート調整 円に代わりウ

ワールド

台湾は31日も警戒態勢維持、中国大規模演習終了を発

ビジネス

中国、26年投資計画発表 420億ドル規模の「二大
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中