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アングル:下がらない円債金利、イラン緊迫化でも海外勢の買い鈍く

2020年01月08日(水)16時46分

 1月8日、中東情勢の緊迫化でリスクオフが金融市場全体に広がる中でも、円債金利はなかなか下がらない。写真は2017年6月撮影(2020年 ロイター/Thomas White/Illustration)

伊賀大記

[東京 8日 ロイター] - 中東情勢の緊迫化でリスクオフが金融市場全体に広がる中でも、円債金利はなかなか下がらない。景況感や金融政策見通しにまだ大きな変化がないこともあるが、海外投資家の動きが鈍いのが大きな要因だ。ドル円ベーシスのマイナス幅が縮小し、円債投資の魅力が低下。金利低下余地が限られていることで、ヘッジ目的の買いも入りにくいという。

<前年末より高い長期金利>

実は日本の10年最長期国債利回り(長期金利)は前年末の12月30日に比べ上昇している。8日はイランがイラクの米軍基地をミサイル攻撃したにもかかわらず、前日比0.5bp低下のマイナス0.015%。一時、マイナス0.030%まで低下したものの、前年末のマイナス0.025%よりも高い水準にとどまった。

米ダウ<.DJI>も7日時点で前年末比0.2%高とプラス圏にあり、極度のリスクオフに陥っているわけではない。しかし、米10年債金利は12月31日の1.91%から8日には1.7%台に低下しており、円債金利の「鈍さ」が目立つ。

その大きな要因は海外投資家の買いが鈍いためのようだ。ドルを円に換える際のドル円ベーシスのマイナス幅が縮小しており、12月初旬には40bp程度あったマイナス幅は、足元で10bp程度に縮小。海外勢がドルを円に換えて円債に投資して得られる上乗せ金利が低下している。

11月の公社債売買(日本証券業協会)では、海外投資家は円債の「買い越し首位」から転落。12月に入っても対内中長期債投資(財務省)で、海外投資家(非居住者)は、21日までのデータで6367億円の売り越しとなっている。

「海外投資家は円債をキャピタルゲイン目的で買っていない。あくまで金利の面での優位性に着目した投資だ。それが低下してきたことで、円債投資を控えているのだろう」と、野村証券のシニア金利ストラテジスト、中島武信氏は指摘する。「マイナス金利を買い進む海外勢の買いが鈍っていることで、金利低下が進まなくなっている」

値動きの鈍さは、リスクオフ時の「安全資産」への逃避買いや、ヘッジ手段としての買いも入りにくくする。値幅が小さければ、ヘッジ効果などは薄れるためだ。

<マイナス金利嫌う国内投資家>

金利低下への「抵抗感」は前日の10年債入札後の相場でもみられた。

7日の10年債入札の結果は、テールが2銭に縮小、応札倍率も3.70倍と前回比上昇した。市場では、無難もしくは順調との評価が聞かれた。

しかし、押し目買いの動きは弱く、円債先物は一時下げ幅を縮小させたものの、すぐに再び軟調な展開に戻ってしまった。「国内投資家は、ゼロ%近辺の10年債には需要があるが、マイナス金利を買い進むことはないということだろう。マイナス金利の債券を買うには、景況感の変化や日銀の追加緩和期待などが必要になる」(国内証券)という。

バークレイズ証券のディレクター、海老原慎司氏は「中東情勢はリスク要因ではあるが、現時点でグローバル景気の底入れ期待や主要中銀の現状維持見通しに大きな影響を与えるものではない」と指摘。ファンダメンタルズへの影響はまだ出ていないとみている。

原油価格上昇が債券に与える影響は複雑だ。必ずしも金利低下要因とは限らない。景気にはネガティブだが、インフレ懸念にもつながる。エネルギー関連企業の株価上昇を伴い株高となれば、金利上昇要因となる。

<ヘッジ外債へのシフト懸念も>

ドル円ベーシスにおけるマイナス幅の縮小は、国内投資家にとっては、ドルのヘッジコストの低下であるため、為替ヘッジ付き外債投資を促す要因になる。

昨年秋以降、国内投資家は、まだプラス金利が残っている日本の超長期債への投資を活発化させ、イールドカーブをフラットニングさせてきた。ヘッジコストの低下により、超長期債からヘッジ付き外債へのシフトが進めば、スティープニングする可能性もある。こうした警戒感も金利を下がりにくくしている要因だ。

2025年から適用予定の新規制(国際資本基準)への対応や、大量の国債償還の再投資需要などから、生保など国内投資家は今年も引き続き超長期債を買う必要があるとみられている。

しかし、あすの30年債入札については、「期末であれば生保などが必要な額を買い入れるといった需要があるが、まだ1月であり、3月まで待つ余裕もある。20年債との対比などでカーブプレーヤーの買いは期待できるが、長期投資家は慎重になる可能性もある」(バンクオブアメリカ・メリルリンチのチーフ金利ストラテジスト、大崎秀一氏)との警戒感も出ている。

(編集:久保信博)

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