ニュース速報

ビジネス

国土強靭化関連株に買い、息長いテーマ 人材不足でコスト増懸念も

2019年12月06日(金)18時04分

 12月6日、政府が事業規模26兆円にのぼる経済対策を決定し、柱の一つに災害からの復旧・復興と安全・安心の確保などを盛り込んだ。写真は都内で2015年7月撮影(2019年 ロイター/Toru Hanai)

杉山健太郎

[東京 6日 ロイター] - 政府が事業規模26兆円にのぼる経済対策を決定し、柱の一つに災害からの復旧・復興と安全・安心の確保などを盛り込んだ。株式市場からは、米中通商協議以外の国内テーマ登場を歓迎する声が出ている。6日の東京株式市場では一部の関連銘柄が業績期待で上昇した。今後も息の長いテーマになりそうだが、事業会社からは人材や下請けの確保に伴うコストアップなどを懸念する声も上がっている。

政府の経済対策決定を受け、6日の東京株式市場では、国土強靭化や災害対策に関連する銘柄群に注目が集まった。環境調査・分析の大手、いであ<9768.T>が前日比15%超上昇し東証1部で値上がり率2位となったほか、地質調査の応用地質<9755.T>、特殊土木工事の日特建設<1929.T>、インフラ補修工事のショーボンドホールディングス<1414.T>なども買われた。

市場からは「セメント株なども上がっている。建設関連は低迷していた部分もあるが、ようやくテーマが出てきて動きやすくなってきた。実需がこれから出てくるので長めのテーマになる」(いちよし証券の銘柄情報課長、及川敬司氏)との声が出ている。

直近では台風による被害にスポットが当たっているものの、国内の道路橋や河川管理施設、港湾岸壁などは老朽化が進んでいる。

岡三証券が国土交通省の推計(2018年11月)を元にまとめたレポートによると、今後30年間で必要となる社会インフラの維持管理・更新費は約195兆円になる見通し。機能に不具合が生じる前に修繕する予防保全をしなかった場合は285兆円まで膨らむことが予想されているという。

岡三証券の山本信一シニアストラテジストは「予防保全だけでも年間6兆円程度の費用が必要となることから、社会インフラの防災・減災関連銘柄に恩恵がある」と指摘する。

<人材確保などに課題>

国土強靭化に絡む銘柄の中には、すでに過去の災害対応で業績面で好影響が出ているところもある。いであは11月5日、海洋環境調査や土壌汚染対策に加え、2018年7月豪雨への対応を含む防災・減災関連業務やインフラ施設の設計・維持管理業務などの売り上げを計上したことなどが貢献し、2019年12月期の連結当期利益予想を前回予想比で47.4%上方修正した。

日特建設は11月8日発表した19年4─9月期の連結営業利益が前年同期比67.3%増。東日本大震災や熊本地震などに絡む大型工事の利益率が改善したことが貢献した。今年に発生した災害への対応については「応急対策的な工事はしているが、本格的な復旧は来年度以降と思われる。好採算の工事を考えて受注活動していく」(広報課長の佐藤忠生氏)としている。

国土強靭化や災害対策が息の長いテーマとなり、受注環境的には順調と言えそうだが、それだけに人材確保が懸念材料になりつつあるという。「社員や当社から仕事を回す下請け業者の確保が難しくなってきている。仕事を取ろうと思っても施工する社員や下請けの業者がいなければ取れない。今期の決算には大きな影響はないものの、来期以降はコストアップの可能性もなくはない」(同)と話す。

業界関係者の中からは「新卒採用もなかなか厳しくなってきた。働き方改革の最中、決められた時間内で質の高い仕事をしていくのかも難しいところだ」との声も聞かれる。人材を確保しつつ、いかに利益率を維持していくかも各社のテーマとなりそうだ。

(編集:青山敦子 グラフ作成:田中志保)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」

ワールド

訂正-米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中