ニュース速報

ビジネス

アングル:任天堂が国内初の直営店、「非ゲーマー」との接点探る

2019年11月19日(火)17時33分

 11月19日、任天堂が、国内で初の直営店を東京に開設する。マリオなど自社のIP(知的財産)への認知を高め、ゲームに関心のない「非ゲーマー」との接点を探る構えだ。写真は都内で撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

[東京 19日 ロイター] - 任天堂<7974.T>が、国内で初の直営店を東京に開設する。マリオなど自社のIP(知的財産)への認知を高め、ゲームに関心のない「非ゲーマー」との接点を探る構えだ。自社のプラットフォームに誘引できれば、主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の販売にも貢献し得る。

任天堂は19日、渋谷パルコにオープンする「Nintendo TOKYO」を報道陣に公開した。マリオやゼルダ、スプラトゥーンといった、任天堂のゲームに登場するキャラクターの関連グッズが所狭しと並ぶ。巨大なスクリーンでゲームを楽しめるコーナーもある。これまで直営点は米NYにはあったものの、日本では初となる取り組みだ。

近年の任天堂は、ゲームファンだけでなく一般消費者をも見据えたIP戦略に力を入れている。来年には、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で「マリオカート」などのアトラクションを盛り込んだ任天堂のテーマエリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」をオープンする。22年には「スーパーマリオ」のアニメ映画も公開される予定だ。

任天堂の古川俊太郎社長は、10月末の決算会見で「ゲーム機以外の場でも、生活空間に近い身近な場でも、キャラクターやゲームに触れてもらう機会を作りたい」と述べた。

<スマホゲームにもIP戦略>

スマホ向けゲームへの参入も、同様の文脈から捉えられる。任天堂は「Miitomo」を皮切りにスマホゲームに参入。スマホは多くの消費者が保有しており、ゲームをしたことのない人が新たにゲーム機を購入するより、ゲームに触れるハードルが低い。

金融市場では、スマホゲームの事業としての成否だけでなく、非ゲーマーへのアプローチの側面も注目されている。大和証券の鈴木崇生アナリストは「任天堂にとって、自社のプラットフォームの普及拡大が絶対的なミッションだ」と指摘する。

スマホゲームでは、米アップルの「アップストア」や米グーグルの「グーグルプレイ・ストア」といった配信サービスを利用する際に支払う手数料が負担となる。自社プラットフォームに送客できれば利益が高まるという。

スマホゲームから自社プラットフォームへの送客は、過去にもあったとファミ通グループの浜村弘一代表は指摘する。2016年11月発売の3DS向けソフト「とびだせ どうぶつの森 amiibo+」は、週あたり販売数が発売1年後には3000本─4000本に落ち着いていた。それがスマホ向けに「どうぶつの森ポケットキャンプ」が発売された17年11月第4週には1万2000本近くへと、一気に跳ね上がった。

<鍵は「スイッチ」への誘導>

非ゲーマーの受け皿となるのが、2011年の発売から約9年を経過した「3DS」だ。販売台数はピーク時からは下降線をたどっているが、古川社長は「今後も販売を継続していく」と語った。サイズが小さく携帯しやすい上、価格面でも安い「エントリー層向け」(古川社長)だからだ。

3DSは開発費などの償却を終えてコスト面で身軽。相対的に低価格で、ゲームに関心のなかった消費者にとっても購買行動のハードルが低い。

3DSで新規需要を取り込んだ後、スイッチに送客するといったサイクルが軌道に乗れば、任天堂が狙うスイッチの長寿命化にもつながり得る。古川社長は10月の会見で、3DSでエントリー層を取り込んだ上で「新しいゲーム体験を求めている人には、スイッチファミリーの魅力を伝えて販売を拡大したい」と語った。

15日は、スイッチ向けのポケモンの新作を発売した。同じポケモンのIPを利用して16年に配信が開始されたスマホ向けゲーム「ポケモンGO」はゲームに関心のない成人の間でも人気となった経緯があることから、ファミ通の浜村代表は「ポケモンGOから(スイッチへ)の送客が始まるかもしれない」とみている。

(平田紀之 グラフ作成:照井裕子 編集:青山敦子)

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中印ブラジル「ロシアと取引継続なら大打撃」、NAT

ビジネス

NY外為市場=ドル急伸し148円台後半、4月以来の

ビジネス

米金利変更急がず、関税の影響は限定的な可能性=ボス

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中