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アングル:米債券自警団に株式市場が加勢、インフレを監視

2018年02月14日(水)09時06分

 2月9日、米国の債券自警団は、株式市場を味方につけたのかもしれない。NY証券取引所で撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

[ニューヨーク 9日 ロイター] - 米国の債券自警団は、株式市場を味方につけたのかもしれない。インフレと米財政赤字拡大への懸念から、自警団は米国債市場で利回りを押し上げているだけでなく、株式市場では株価を押し下げ、金融政策と政府の経済政策を罰しているようだ。

「株式市場も債券市場と痛みを分け合っている。間違いない。株式市場にも自警団がいる」と語るのは、コンサルタント会社ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏だ。

「債券自警団」という言葉はヤルデニ氏が1983年に生み出した。投資家が国債利回りを押し上げ、レーガン政権下のインフレ・財政赤字懸念を埋め合わせようとした現象をこう表現した。

今回は、2日発表の雇用統計で平均賃金が大幅に伸びたのをきっかけに、国債利回りが急上昇を始めた。

株式自警団側の理屈はこうだ。利回りが上がり、インフレ圧力が高まり、景気が潜在成長率ぎりぎりのペースで拡大し、それに対応して米連邦準備理事会(FRB)が本当に利上げを加速させるのなら、株価水準はもっと低くなくてはならない。可能性としては、ぐんと低く。

ワンダーリッチ・セキュリティーズの首席市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏は「過去6年間というもの、低金利・低インフレ環境だから株価バリュエーションは高くて当然だと言い続けてきた。しかしその流れが逆になってきていることを、今は注視している」と話す。

ヤルデニ氏は、米国株が国債利回りの上昇に神経過敏になったと指摘する。背景には、米政府の債務が積み上がっていることもある。

米政府機関の閉鎖を回避するため、歳出上限の引き上げが決まったことで、財政赤字は膨張すると予想されている。

債券王として知られるジェフリー・ガンドラック氏はロイターに対し、国債が大量に供給され、アトランタ地区連銀の経済予測モデル「GDPナウ」で実質成長率予想が年率4.0%となり、平均時給が2.9%伸びている今、「10年物米国債は利回りが3%でも魅力が乏しい」と述べた。

ガンドラック氏は「加えて、もし株価暴落をきっかけに景気が急降下すれば、(景気対策のために)さらに国債供給が増えるだろう。2019年度に向けて既に数兆ドル発行されようとしているところに、さらに数兆ドル積み上がるといった事態だ」と続けた。

ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は昨年11月、「米国は財政赤字を外国人に賄ってもらっている数少ない国のひとつだ」とし、諸外国の貯蓄率が下がれば長期的に警戒すべき問題になると指摘していた。

ヤルデニ氏は、これまでFRBの量的緩和政策が債務増大の懸念を覆い隠していたが、利上げによって状況は一変したと言う。

「債券と株が長い間、米国の債務蓄積に反応してこなかったのは、FRBが抱え込んでいたからだ。FRBが引き締めに転じ、バランスシートを縮小している今、力学は変わった」と語った。

(Jennifer Ablan記者 Trevor Hunnicutt記者)

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