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焦点:止まらない円高、賃上げに影響も 日欧「反撃発言」に注目

2018年01月25日(木)19時14分

 1月25日、ドル安/円高が止まらない。米国のセーフガード発動で貿易摩擦問題への懸念が高まる中、米財務長官のドル安容認発言が拍車をかけている。写真は円とドルの紙幣、2010年9月撮影(2018年 ロイター/Yuriko Nakao)

[東京 25日 ロイター] - ドル安/円高が止まらない。米国のセーフガード発動で貿易摩擦問題への懸念が高まる中、米財務長官のドル安容認発言が拍車をかけている。円高進行で日本企業の業績上振れ余地が狭まれば、これから本格化する春闘の賃上げ交渉にも影響を与えかねない。日欧当局者などからけん制発言が出るかが今後の注目点だ。

<CTAもドル/円ショートに転換か>

節目の110円を24日に割り込んだドルは、25日に108.73円まで下値を広げた。国内実需筋などの買いで一時は109円半ばまで戻したものの、下落トレンドを変えるには至らなかった。

これまで110円はレンジ下限とみる国内投資家から買いが入りやすく底堅いとの見方が根強かっただけに、市場では「110円割れの意味は大きい。105円方向へドアが開かれた」(大手邦銀)との指摘もある。

トレンドフォロー型のCTA(商品投資顧問業者)も、ドル/円ショートに転換したとの見方が出ている。「早期に下落トレンド反転のきっかけをつかめなければ、CTAの売りは2月半ばまでくすぶり続け、一本調子でショートが打ち込まれる展開が現実味を帯びる」と野村証券のクオンツ・ストラテジスト、高田将成氏はみる。

通貨オプション市場でもドル安/円高予想が急速に強まっている。ロイターデータによると、ドル/円リスクリバーサル(RR)の1カ月物は、ドルプットオーバーの傾きが昨年11月以来の水準に拡大した。

ドル/円は、昨年9月から11月の上昇に対するリトレースメント61.8%戻しに当たる110.15円を下抜けており、次の下値サポートは昨年9月安値107円前半まで見当たらない。「短期筋はドル安/円高でどこまで行けるか探る展開になっている」(国内証券)という。

<春闘の賃上げ交渉にも影響>

現地生産化などで耐性がついてきたとはいえ、円高は日本企業全体の業績に対して依然ネガティブ。12月日銀短観の大企業・製造業の想定為替レートは2017年度が110.18円。下期は109.66円となっている。大和証券が主要事業会社200社を対象に行った試算によると、1円のドル安/円高は年間ベースで経常利益を0.4%押し下げる。

企業業績が圧迫されれば、春闘の行方にも影響する可能性がある。「これから賃上げ交渉が本格化するが、あまり円高に行くと為替感応度の高い輸出企業などに渋い回答の口実を作ってしまう。安倍政権が求める3%の賃上げにも説得力がなくなる」(国内信託銀)という。

春闘の動向は、デフレ脱却宣言や消費増税の最終判断にも関わる。市場では「政府として円高はうれしくない。スピードを伴って108円を割り込んでいけば、麻生太郎財務相などから『速すぎるのは良くない』と口先介入があるかもしれない」(同)との見方が浮上してきた。

ただ、今回の円高の要因はドル安だけに、日本の当局者のけん制が効果を発揮するかは未知数。「今後数日かけて米国の主要閣僚などから修正するような発言が出るかが鍵となる。もしそれがなければ、ドルはもう一段下値を探る動きとなる」(シティグループ証券の外国為替・新興国市場本部長、狩野弘一氏)との指摘もある。

もうひとつの注目は、25日の欧州中央銀行(ECB)理事会。「ユーロ高けん制が入り、ユーロが売られる可能性が高いが、ドル/円はここで110円台にしっかり戻せるかが重要。チャンスがある時に戻せないと、潮が引くように、ドル高に賭ける人たちがいなくなりそうだ」(国内金融機関)とされ、関心が高まっている。

(杉山健太郎 編集:伊賀大記)

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