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アングル:ユーロ圏国債ヘッジファンド引受増加、突然の売りも

2016年11月23日(水)09時39分

 11月21日、ユーロ圏諸国の国債引き受け先として、ヘッジファンドの割合が増加しつつある。写真はユーロ紙幣。ウィーンで10月撮影(2016年 ロイター/Leonhard Foeger)

[ロンドン 21日 ロイター] - ユーロ圏諸国の国債引き受け先として、ヘッジファンドの割合が増加しつつある。銀行がバランスシート面の制約からかつてほどの規模を引き受けられなくなったことで、いくつかの国が新発債消化のためにヘッジファンドに依存するようになったことがデータや政府関係者、銀行関係者などへの取材で判明した。

ただヘッジファンドは「足の速い」投資家として知られており、情勢次第で突然大規模な国債売りに見舞われ、市場から資金が流出するリスクが浮上している。

スペインやイタリア、ベルギーなどが今年、超低金利局面を生かして相次いで発行した50年債を見ると、ヘッジファンドに割り当てられた比率は13─17%と歴史的な高水準になった。IFRのデータによるとほんの3年前は、これら3カ国のシンジケート方式の国債発行におけるヘッジファンドの割り当て比率は4─7%だった。

オーストリア財務省の資本市場・IR責任者クリスチャン・シュレカイス氏は、同国が最近発行した70年債にはヘッジファンドから強い引き合いがあったと語り、「過去1─2年で欧州のソブリン債市場においてヘッジファンドの動きがより活発化しているとわれわれは認識している」と付け加えた。

ベルギー債務管理庁のアン・ルクレック長官は「以前は全般的に銀行からの需要がもっと大きかった。今はヘッジファンドが銀行の役割をある程度果たしている」と説明した。

ベルギーが3月に発行した35億ユーロの30年債は、最大で24.34%がヘッジファンドに販売された。

スペインとイタリアの当局からは、ヘッジファンドの国債引き受け増加についてのコメント要請に対して回答がなかった。

RBSでユーロ圏数カ国の国債発行を担当する公的部門シンジケーション責任者ダミアン・カルデ氏は「ヘッジファンドの重要性は高まっている。大型起債が必要なら、ヘッジファンドに引き受けてもらうのは常にプラスになる」と話した。その一方、足の速さは変わっていないとした上で「彼らはそれなりの短期的なリターンが期待できる場合は投資してくれるが、儲かる見込みがなくなればすぐに逃げ去るだろう」と警告する。

こうしたヘッジファンドの動きで痛い目にあった例として、ギリシャの国債販売を担当する2人の銀行関係者は、2014年4月に同国が発行市場に復帰した際にヘッジファンドに頼り過ぎたことを挙げた。 このうちの1人は「ヘッジファンドは新発債の大部分を買ったものの、売る際には一刻も早く処分しようとしていた」と振り返る。

今年の場合も各国が発行した50年債や70年債はすべて、全般的な売り局面を迎えるようになって大きく値下がりしている。例えばイタリアの50年債(50億ユーロ)利回りは、10月初めの発行以来で58ベーシスポイント(bp)上昇し、BBAの計算では保有を続けている投資家のリターンはマイナス11%超になった。

(Abhinav Ramnarayan、Helen Reid記者)

ロイター
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