ニュース速報

アングル:トランプ氏のメキシコ関税措置、自動車業界に波紋

2019年06月01日(土)08時39分

田実直美 and Georgina Prodhan

[東京/ミラノ 31日 ロイター] - トランプ米大統領がメキシコに制裁関税を課す計画を発表したことを受け、自動車業界に波紋が広がっている。自動車メーカーの多くがメキシコを米国への生産拠点としていることから、影響は不可避との懸念が台頭している。

トランプ大統領は30日、メキシコ国境からの不法移民流入に同国が十分に対応していないとし、6月10日以降メキシコからの輸入品すべてに5%の関税を課し、移民の流入が止まるまで関税率を段階的に引き上げると表明。中米諸国からメキシコを通って米国に入る移民の流れを止める対策をメキシコが講じなければ、関税率は7月1日に10%、8月1日に15%、9月1日に20%、10月1日に25%に引き上げるとした。[nL4N236563]

トランプ大統領はツイッターへの投稿で「関税が上昇し、それを払いたくない企業はメキシコを離れ、米国に戻るべきだ」と述べた。

TSロンバードのシニアマクロストラテジスト、ジョン・ハリソン氏は「米経済に打撃を与えず関税を武器にできるというトランプ大統領の見方を示しており、懸念すべきことで、世界の貿易見通し全体に誤ったシグナルを送ることになる」と述べた。

全米自動車政策評議会(AAPC)は、対メキシコ制裁関税は、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新たな貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」を頓挫させ、米自動車業界が多額のコスト負担を余儀なくされる可能性があると指摘した。

消費者への影響も必至とみられ、マッコーリー・セキュリティーズのアナリスト、ジャネット・ルイス氏は「米市場におけるマージンは極めて低い。自動車メーカーによる関税コストの消費者への転嫁は回避できないだろう」との見方を示した。

米商務省のデータによると、昨年メキシコの組立工場で生産され、米国に輸入された車両は金額ベースで526億ドル、自動車部品は325億ドルに上る。

トヨタ自動車のピックアップトラック「タコマ」や独フォルクスワーゲン(VW)の「ジェッタ」、ゼネラル・モーターズ(GM)のピックアップトラック「シボレー・シルバラード」といった、米国で販売されている人気車の一部がメキシコで生産されている。

こうした懸念から、自動車・部品株は世界的に下落。トヨタは3%、日産自動車は5%、ホンダは4%、マツダは7%それぞれ下落。VWをはじめとする欧州勢は最大5%安、GMとフォード・モーターも約4%安で推移した。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中マドリード協議、2日目へ 貿易・TikTok議

ビジネス

米FTCがグーグルとアマゾン調査、検索広告慣行巡り

ビジネス

中国新築住宅価格、8月も下落続く 追加政策支援に期

ワールド

北朝鮮、核兵器と通常兵力を同時に推進 金総書記が党
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 3
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人に共通する特徴とは?
  • 4
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    【動画あり】火星に古代生命が存在していた!? NAS…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中