ニュース速報

米FRB副議長、忍耐強い金利政策の転換示唆せず

2019年05月31日(金)09時25分

[ニューヨーク/サンフランシスコ 30日 ロイター] - 債券市場で米中貿易摩擦による経済成長への影響を巡る懸念が高まる中、米連邦準備理事会(FRB)当局者は30日の講演で、金利政策における忍耐強い姿勢の転換を示す手掛かりはほとんど与えなかった。

FRBのクラリダ副議長は講演で、「米経済は非常に良好な状況にある」と述べ、50年ぶりの低水準近辺にある失業率や抑制されたインフレ圧力、安定的なインフレ期待を指摘したほか、堅調な成長率が今後も続く見通しとした。

さらに、政策金利は適切な水準にあり、FRBの二大責務である最大雇用と物価安定の達成にも極めて近いことを示す多くの兆候を確認していると述べた。

一方で、自身の見通しに対する主要なリスクとして、世界経済の減速の兆しと予想を下回る米インフレ率を挙げた。

クラリダ氏は「FRBは見通しに対する潜在的なリスクを注視している。見通しに対し下振れリスクが確認されれば、より緩和的な政策を必要とする要因になり得る」と述べた。

FRBは今年、政策金利を2.25─2.50%に据え置いているが、米中貿易摩擦や低インフレを背景に、市場ではFRBの次の金利変更は利下げになるとの見方が強まっている。

米国債利回りは今週、質への逃避の動きから大幅に低下し、30日も一部で逆イールドの状態が続いた。3カ月物財務省短期証券(Tビル)の利回りは2.37%と、2年債の2.07%や10年債の2.23%を上回った。

こうした中、FRBのクオールズ副議長(金融規制担当)は30日の講演で、金融安定リスクへの対応において金利は最善の手段ではないとしてきたFRBの見解をあらためて表明した。

クオールズ副議長は講演で金利に直接言及しなかったものの、今後数カ月間の利下げを見込む金利先物市場の予想を裏付ける内容はほとんど見当たらなかった。

「緩和的な金融政策は、景気拡大の初期段階では経済活動を支えるために必要だが、特に過度に長期にわたって(政策を)維持した場合、金融システムの脆弱性を高める可能性がある」と述べた。

クラリダ、クオールズ両副議長は米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を持ち、クラリダ氏は特に影響力が大きいとみられている。

米インフレ率は当局者の予想を下回る水準で推移している。クラリダ氏は、弱い物価上昇の一部は「一時的」となる可能性もあるが、現在のインフレ期待はインフレが適切なレンジの「下限」にあることを示唆していると指摘した。

米商務省が30日発表した第1・四半期のコア個人消費支出(PCE)価格指数(改定値)は1.0%上昇と、速報値の1.3%上昇から下方改定され、FRBが目標とする2%からさらに遠ざかった。

*情報を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

実質消費支出5月は前年比+4.7%、2カ月ぶり増 

ビジネス

ドイツ、成長軌道への復帰が最優先課題=クリングバイ

ワールド

米農場の移民労働者、トランプ氏が滞在容認

ビジネス

中国、太陽光発電業界の低価格競争を抑制へ 旧式生産
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 6
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中