ニュース速報

ファーウェイ規制、米中通商協議やハイテク部門に暗雲 中国反発

2019年05月17日(金)08時29分

[ワシントン/北京 16日 ロイター] - 米政府が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]への事実上の輸出規制を決定したことについて、中国側は両国の通商協議に影を落としかねないとして米国の対応を批判した。大手ハイテク企業への影響を巡っても懸念が高まり、米国市場ではファーウェイと取引する企業の株価が値下がりした。

ファーウェイは声明で、同社と米国の供給元との関係が絶たれれば「米国企業に重大な経済的被害をもたらし、全米で数万人規模の雇用に悪影響を及ぼす」と警告。さらに「当社として即刻改善措置を検討するとともに、当問題への解決策を模索する」とした。

中国商務省の高峰報道官は定例会見で、他国が中国企業に一方的に制裁を科すことに強く反対すると表明。米国は中国との通商関係をさらに悪化させるような行動を避けるべきと指摘した。その上で「中国はこれまで、国家の安全保障を悪用すべきでなく、貿易保護主義の手段に利用すべきでない、と繰り返し強調してきた」とし、「中国企業の正当な権利を断固守るためにあらゆる必要な措置を講じていく」と述べた。

また中国外務省は、拘束していたカナダの元外交官マイケル・コブリグ氏と企業家のマイケル・スパバ氏を正式に逮捕したと発表した。

両氏はファーウェイの孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)が米国の要請を受けてカナダで逮捕された後間もなく拘束された経緯がある。

米商務省は15日、ファーウェイと関連70社について、米政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティーリスト」に追加すると発表した。

商務省は16日、規制対象となるファーウェイ関連企業を68社に修正した。

商務省報道官は、措置は直ちに発効するとし、日本やカナダ、ブラジル、英国、シンガポールなど20カ国以上にあるファーウェイ関連企業が含まれると述べた。

商務省は、取引許可を求める申請は「推定却下」の方針に基づいて審査されるとした。これは許可の取得が極めて難しいことを示唆している。

調査会社ガートナーによると、ファーウェイは昨年の半導体購入が世界全体の4.4%を占め、サムスン電子<005930.KS>とアップルに次いで3位だった。

米国の議員らは党派を超えて今回の決定への支持を表明。マルコ・ルビオ上院議員(共和)はツイッターで、各企業ともファーウェイと長期契約を結ぶことを考え直した方がいいとした上で「ファーウェイはまもなく半導体やアンテナ、電話操作系統など重要部品へのアクセスを失うだろう」と指摘した。ファーウェイは今やいかに存続して行くかが重大な問題になっているとも述べた。

だが、主要アナリストは16日、複数の米半導体企業の投資判断を引き下げた。

サスケハナのアナリストは、ファーウェイがこれまでに米国の部品に関し1―2年分の在庫を積み上げてきたと指摘。その上で、ザイリンクスなど複数の半導体銘柄の目標株価を引き下げた。

ザイリンクスは7.3%安、クアルコムは4%安で取引を終えた。

米中の通商協議は前週、こう着状態に陥り、米国は2000億ドル相当の中国製品に対する関税を引き上げることで中国への圧力を強めた。これに対し中国側も、米国からの600億ドル相当の輸入品に対する関税を引き上げる報復措置を発表した。

中国は関税で対抗する余地が限られつつあり、アナリストは中国が企業の合併・買収(M&A)案件の阻止など他の手段で米国に圧力をかける可能性があるとみている。

また、外交問題評議会のエドワード・アレン上級研究員はファーウェイを巡る問題について、貿易摩擦の解決を著しく複雑にすると指摘。「米国が措置を講じるたびに中国側は抵抗を控えることが難しくなっている」と話した。

*内容を追加しました。

ロイター
Copyright (C) 2019 トムソンロイター・ジャパン(株) 記事の無断転用を禁じます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トヨタ、23年度は世界販売・生産が過去最高 HV好

ビジネス

EVポールスター、中国以外で生産加速 EU・中国の

ワールド

東南アジア4カ国からの太陽光パネルに米の関税発動要

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時700円超安 前日の上げ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中