コラム

リビア争乱で小国マルタが大活躍

2011年03月04日(金)15時15分

 地中海に浮かぶ小さな島国マルタが、地理的なリビアへの近さから、各国が自国民をリビアから避難させる際の輸送拠点になっている(リビアの首都トリポリは東部の主要都市ベンガジよりマルタの方が近い)。インド、ロシア、中国、フィリピンなどの国々がチャーター機やフェリーを使って、混乱が増すトリポリから自国民を脱出させている。マルタ自体もチャーター機でエジプト人900人をリビアから出国させた。

 人口41万のマルタを経由してリビアから逃れた外国人労働者は、この1週間で1万2000人にも上る。マルタは国際的な人道援助の中継地としても各国に協力している。

亡命受け入れで反カダフィ路線へ

 マルタは、できれば中立の立場を守りたかっただろう。親アラブ外交を掲げたドム・ミントフ元大統領の時代から、マルタはリビアのカダフィ政権と長く良好な関係を維持してきた(ミントフは08年、カダフィ国際人権賞を受賞した)。マルタは昨年、リビアがスイス人ビジネスマンを拘束していた外交問題を解決する仲介役を果たし、10月にはリビアとの間で新たな相互友好条約の協議を始めていた。

 しかし先週、リビアの戦闘機のパイロット2人がリビア市民への爆撃を拒否してマルタの空港に着陸すると、マルタは立場をはっきり示さなければならなくなった。マルタは戦闘機2機の返却を求めたリビア政府の要求を拒絶。2機はイギリス空軍に引き渡された。2人のパイロットは政治亡命を求めている。

 今月1日、リビアの反体制派がマルタのリビア大使館の屋根によじ登ってカダフィ政権の緑の旗を降ろし、反体制派を象徴する革命以前の旗に付け替えた。当日にはリビア大使も、リビア国民を代表する旗だったらどんな旗でも受け入れると言っていたが、翌々日には緑の旗に戻されてしまった。

 隣国リビアの争乱のなか、小国マルタの振る舞いが拡大鏡で見るように大きく見える。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2011年03月03日(木)16時39分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 3/3/2011. © 2011 by The Washington Post Company.

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国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

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