コラム

ハンガリー危機の嘘つき比べ

2010年06月08日(火)15時35分

 ハンガリーの与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」が先週、同国経済がギリシャ型の危機に直面していることを全世界に知らしめたため、ハンガリーの通貨フォリントはユーロとともに急落した。与党は今、そのダメージを修復しようと滑稽な努力をしている。


「ハンガリーがギリシャではないのは明らかだ」と、ミハリー・バルガ首相首席補佐官は7日のテレビインタビューで述べた。「ギリシャには2300億ユーロ(2748億ドル)の公的債務があるが、ハンガリーの公的債務はわずか760億ユーロしかない。だからハンガリーはギリシャではない」

ギリシャのような国と比較されるのは「残念」だとバルガが述べたことも、5日に報じられている。


 念のために書くと、ギリシャとの比較はバルガが所属する与党の幹部が言及し、それをビクトル・オルバン首相の主席報道官が肯定していた。

 ハンガリー政府がこうした奇妙な行動を取ったのは、同国の状況を実態よりひどく見せかけようとしたためと見られている。与党は減税と景気刺激策を公約して選挙に勝利したが、その公約を守れないことへの批判をかわすのが目的らしい。

 フィナンシャルタイムズ紙のレックスコラムは、ハンガリー政府の動きについて「期待値管理が下手過ぎた」と論評した。まったくそのとおりだ。発足したばかりの新政権にとって輝かしいデビューとはいかなくなった。前政権与党の社会党のほうが正直だったというわけではないが、社会党が嘘をついたときは何とかうまくいったのだ(編集部注:社会党は選挙に勝つために経済政策について国民を欺き続けてきたと、党首のジュルチャーニ・フェレンツ首相が2006年に認めた)。

──ジョシュア・キーティング
[米国東部時間2010年06月07日(月)13時08分更新]

Reprinted with permission from FP Passport, 8/6/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

プロフィール

ForeignPolicy.com

国際政治学者サミュエル・ハンチントンらによって1970年に創刊された『フォーリン・ポリシー』は、国際政治、経済、思想を扱うアメリカの外交専門誌。発行元は、ワシントン・ポスト・ニューズウィーク・インタラクティブ傘下のスレート・グループ。『PASSPORT:外交エディター24時』は、ワシントンの編集部が手がける同誌オンライン版のオリジナル・ブログ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、中国製半導体に関税導入へ 適用27年6月に先送

ワールド

トランプ氏、カザフ・ウズベク首脳を来年のG20サミ

ワールド

米司法省、エプスタイン新資料公開 トランプ氏が自家

ワールド

ウクライナ、複数の草案文書準備 代表団協議受けゼレ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 9
    砂浜に被害者の持ち物が...ユダヤ教の祝祭を血で染め…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story