<トランプは保守州ばかりを遊説で回っており、共和党の厳しい情勢をうかがわせる>
アメリカの中間選挙まで2週間を切りました。どうやら、民主党が優勢というモメンタムはこのまま投票日まで続く気配です。その民主党は、多くの選挙区について「決して優勢ではないので気を抜くな」とか「世論調査より共和党は5%以上、上乗せしてくる」といったメッセージを出し続けています。これは優勢ムードで現場の気が緩む、特に消極的支持層が面倒になって棄権するのを防止する「引き締め策」だと考えられます。この点については、どうやら前回までの失敗に学んでいるようです。
では、このまま民主党圧勝、共和党の造反も含めて一気にトランプ大統領の弾劾に突っ走るのかというと、そうした声はここへ来て少なくなってきています。民主党のホンネの部分では、弾劾をしてしまうと「トランプという共通敵」を失って、実際は水と油である民主党の内部抗争が噴出してしまうからで、党内の結束のためには「トランプ政権への追及はじっくり進めたい」ということなのだと思います。
それ以前の問題として、有権者の心理を考えると、「政争より生活」「弾劾より物価」という態度を示した方が共感を呼ぶということも意識されているようです。こうした作戦についても、やはり過去の失敗に学んではいるようです。
一方で、共和党サイドでは大統領自身が精力的に遊説に回っていますが、その場所が異例なことになっています。常識的には上院の過半数を競う中で「中道州(スイングステート)」で運動を展開するというのが、この選挙戦の終盤では必要なはずです。ところが大統領が回るのは保守州ばかりとなっています。過去10年の選挙では保守が悠々と勝利してきた場所ばかりを回っているのです。
こうした行動の背景ですが、「中道州では無党派層の政権への嫌悪が激しいので、大統領自身が乗り込むと逆効果」ということに加えて「保守州の一部の下院選挙区で民主党がまさかの猛追をしており、共和党候補の応援が必要になった」ということもあるようです。これはこれで合理的な行動とも言えますが、共和党陣営としてはかなり厳しい戦いになっている証拠だとも考えられます。
ミシガン州上院でイスラム系民主候補が優勢
まず上院ですが、こちらは各州の全州区が選挙区で、今回の改選の中で、一般的に言われている注目区は「ジョージア」「ミシガン」「テキサス」の3州です。
まずジョージアは、昔から中道州で民主と共和が競ってきています。今回は民主党のジョン・オソフ候補(現職)が再選を狙う中で有力視されています。注目すべきは、このオソフ議員は次回、2028年の大統領選へ向けて民主党穏健派のユダヤ系大統領候補として待望論があることです。オソフ氏が大勝すれば、その待望論は加速するでしょうし、辛勝に終われば勢いは止まる可能性があります。
次にミシガンは、基本的に自動車組合などを基盤に歴史的に民主党が強かった州ですが、産業の衰退を問題視したトランプ氏が保守化に成功した州でもあります。ですから、民主党としては奪還したいし、そもそも奪還の可能性が強い情勢がありました。そんな中で、予備選では左派でイスラム系のエルサイード氏が指名され「せっかくのチャンスなのに、中道票に遠い候補を選んだ」という懸念が生じています。ですが、現時点ではエルサイード氏は優勢と伝えられています。同候補が勝てば、党内左派の存在感は否が応でも高まると思います。
また、ミシガンの場合、2024年の大統領選で「イスラエル支持を崩さない」ハリス候補に幻滅したアラブ系の票が棄権に回ってしまい、結果的にトランプ氏を勝利に導いたとされます。今回は、本人がアラブ系でパレスチナ支持のエルサイード氏を候補に選んで戦っているのは、まさに前回の反省の結果と見られています。そこで、どのような票の出方をするのかは、全国レベルの政局にも影響があると考えられます。
テキサスは基本的に保守州ですが、「宗教色の強い穏健リベラル」という珍しい立ち位置のタラリコ候補(民主)が若々しいカリスマ性で人気を拡大しています。一方で共和党は思い切りMAGAのパクストン候補を選んで中道票から距離が出てしまっています。その、パクストン氏は自分が苦戦しているのは、大統領が原因だとして、トランプ氏の批判に走るという迷走を見せています。巨大州テキサスが民主党に傾くかどうかで、全国レベルの激動が生まれるかもしれません。