※“A picture is worth a thousand words.”――1枚の写真には千の言葉の価値がある。世界の今を鋭く捉えるドキュメンタリーから、感性を刺激する芸術的なアプローチまで。連載「Picture Power “世界を物語る”写真の力」からお届けします。
世界で最も大気汚染が深刻なモンゴルの首都ウランバートル。毎年冬には深刻なスモッグに襲われ、有毒な微小粒子状物質PM2.5の濃度は、WHO(世界保健機関)の基準の30〜100倍にもなる。
汚染の原因はマイナス40度にもなる寒さと都市化、貧困、石炭依存が絡み合う。特に、貧しい元遊牧民が暮らす「ゲル地区」の移動式住居ゲルで使われる石炭ストーブの影響が大きい。石炭はモンゴル経済の重要な柱でもあり、昨年は輸出総額の約4割を占めた。
多くの人が呼吸器疾患など健康被害に苦しむ一方、富裕層は高価な空気清浄機を使い、冬季には国外へ避難する家庭もあるなど格差も目立つ。
大気汚染の解決を目指して活動するNGOブリーズ・モンゴリアのエンフーン(24)は怒りを込めて語る。「ゲル地区の住民が石炭を燃やすのは、ほかに選択肢がないから。問題の根底には貧困がある」
この問題に取り組むことは貧困や不正義、政治責任について語ることでもあると言う彼女は、若い世代の教育に力を注ぐ。石炭依存から抜け出す未来を考えられるのは、現支配層ではなく彼らだからだ。
Photographs by Pascal Maitre-Panos
撮影:パスカル・メートル 1955年、フランス生まれのフォトジャーナリスト。1985〜2020年に継続的にアフガニスタンを取材し、バーミヤンの大仏、タリバンの台頭、軍事指導者マスードなどの貴重な写真を撮影した。アフリカの40カ国以上も訪れ、政治、紛争、伝統、環境などさまざまなテーマの作品を制作している
【第1044回】

インフレ&終わらない戦争で中間選挙は敗北必至。米経済/戦争/関税/次期大統領選……はどうなる?