<世界中で深刻化するサッカー選手へのネット上での攻撃。その背景には、中世から続く「暴力とサッカー」の切っても切れない歴史がある>
近年、サッカー界ではピッチの上ではなく、スマートフォンの画面の中で凄惨な戦いが繰り広げられている。
記憶に新しいワールドカップ(W杯)のブラジル戦。アディショナルタイムで、ボールを奪われて逆転負けを喫した日本代表の田中碧選手に対し、SNS上では容赦のない誹謗中傷の嵐が吹き荒れた。
同様の悲劇はグループステージで日本と戦ったオランダ代表にも起こり、オランダサッカー協会が「言語道断である」と声明を出す事態にまで発展している。日本サッカー協会の宮本恒靖会長も選手を守るために毅然とした態度を示すなど、今や「言葉の暴力」はサッカー界最大の敵となった。
なぜ、私たちはこれほどまでにサッカーに対して攻撃的になってしまうのだろうか。その答えを探るには、このスポーツが歩んできた血塗られた歴史のページをめくる必要がある。
サッカーと暴力の歴史
サッカーの起源には諸説あるが、その一つに「イングランドに攻め込んだフランス(ノルマン人)の兵がイングランド王の首を切り落とし、その首をフランス王に差し出すため、ロンドンまで蹴りながら運んだ」という凄惨な説がある。
その真偽はともかく、歴史に記録されているサッカーのルーツは「暴力そのもの」であった。それは、中世イギリスで行われていた、村と村がプライドをかけて激突する祭りとして存在した。そこでは、相手を殴る、蹴るの暴行が許され、時には死者すら出る有り様だった。
当時、ボールは手でも扱えたが、うかつにボールを抱え込もうものなら、敵の集団に囲まれて命の危険に晒される。そのため、村人たちは「自分の身を守るために、できるだけ早く足元からボールを離す」という技を身につけていった。これが、のちの華麗な「足技」へと発展していくのだから歴史は皮肉である。