「生卵」から「文字」の暴力に

そして現在。かつて国立競技場で投げつけられた「生卵」は、インターネットの発達とともに、スマートフォンの画面を飛び交う「文字」へと姿を変えた。リアルな暴動からバーチャルの誹謗中傷へ。肉体的な暴力は、より手軽で、より陰湿な精神的暴力へとアップデートされたのである。

古くはローマ帝国の剣闘士(グラディエーター)の決闘、そしてスペインの闘牛。人類は常に、血の匂いがするエンターテインメントに熱狂し、日頃の不満やストレスを解消するカタルシス(精神の浄化)を得てきた。

大航海時代にポルトガルやスペインが、自国内の暴力の排出先として行った「侵略」。その支配下にあったブラジルやメキシコが、現在はポルトガルやスペインと同等のサッカー強豪国として君臨しているのも、歴史の皮肉な結果である。

スポーツは、人間の持つ暴力的なエネルギーを安全に解放するための「フィルター」であるべきだ。しかし一歩間違えれば、それは容易に他者を傷つける「トリガー(引き金)」へと変貌する。

選手をSNSの刃から守り、サッカーを純粋な歓喜とカタルシスの場にとどめるため、今、私たちは中世の「生首を蹴っていた時代」に逆戻りするか、それとも真のスポーツ文化を築くか、その岐路に立たされている。

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