最新記事
韓国

リチウムイオンバッテリー火災で国家クラウドが炎上──韓国政府機関の火災が示した「デジタル先進国」の脆さ

2025年10月27日(月)16時25分
佐々木和義

安全基準を逸脱して運用

今回の火災事故の原因は、2014年に納入されたUPS用バッテリーが推奨使用期間(10年)を超過していたこと、さらに移設作業時の充電率(SOC)が基準の30%以下に対し約80%だったとする報道が相次いだ。こうした安全基準逸脱が火災の誘因・拡大要因と指摘されている。

初動対応の遅れも被害を拡大させた一因だ。管理院の火災対応マニュアルでは、バッテリー火災が発生した際、消防到着前5分以内の電源遮断が定められているが、実際にすべての電源が遮断されたのは通報から2時間42分後で、消防からの要請を受けた後だった。

行政安全部によると、国家情報資源管理院のデータ・センターは大田、公州(コンジュ)、大邱(テグ)の3カ所に設置され、1級から4級に分類されたデータのうち、重要な1・2級データは1日1回分散バックアップを行い、3・4級データは毎月末にバックアップしているという。今回の大田での火災では前回バックアップを行った8月末以降に作成された相当数の3・4級データが失われた可能性が指摘されている。

また中央政府74機関の職員19万1000人中12万5000人が使用していたG-Driveは、バックアップが取られていなかった。職員が使用するPCとG-Driveを併用している機関もあるが、セキュリティ対策のためすべてをG-Driveに保存していた機関もある。

繰り返される大規模障害

韓国では通信・ITインフラの火災や故障に起因する大規模障害がたびたび発生してきた。2018年11月のKT阿峴(アヒョン)支社の火災では広域の通信障害が起き、病院や緊急通報にも影響が及んだ。2022年10月にはSK C&Cデータセンター火災でカカオやネイバーの主要サービスが停止。ネイバーは数時間で復旧した一方、カカオの復旧は火災発生から30時間後だった。

カカオは火災発生当時、8か所の、政府機関と285の自治体、公共機関47か所と銀行、カード会社、保険会社など多くの企業が利用しており、尹錫悦大統領(当時)が「国家基盤通信網と変わらない」と述べるほど国民生活に不可欠なサービスで市民生活に多大な影響を及ぼした。

キャリア
AI時代の転職こそ「人」の力を──テクノロジーと専門性を備えたLHHのコンサルティング
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国外相が米国務長官と電話会談、 「ハイレベル交流

ワールド

トランプ氏「ミサイル実験より戦争終結を」 プーチン

ビジネス

中国人民銀、公開市場での国債売買を再開と総裁表明 

ビジネス

インド、国営銀行の外資出資上限を49%に引き上げへ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 5
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 6
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中