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エジプト

底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由──両国を結ぶ、才と優しさの物語は新章へ

2025年10月8日(水)15時00分
アルモーメン・アブドーラ(東海大学国際学部教授)

そして二つ目の性質は「利他性」と言えようか。長い歴史で国を生かしたのも、また滅ぼしたのも、この「利他性」だったと私は思う。
 
かつてエジプトがオスマントルコに支配されていた時代には、多くの優秀なエジプトの職人たちが帝国の首都イスタンブールに派遣され、職人技の伝授に大きな貢献を果たしてきたという歴史がある。現代においても、多くのエジプト人専門家たちがアラブ地域の湾岸諸国でそれらの国々の近代化や国造りに貢献し活躍している。

母国ということでややひいき目に見ている自覚はあるが、それでも周りの人たちのため、あるいは世界の誰かのために貢献するという利他性こそ、エジプト人の大きな力であると思うのだ。

もっとも、エジプト社会には弱点もある。それは「信奉」の有無によって、力が発揮されるか否かが大きく左右されることである。つまり、信念とその土台となる倫理がぶれると、たちまち脆弱になってしまうのだ。エジプト国民の力を引き出すための様々な要素の中で、一番重要なのは「信奉」ではないかと私は感じている。

古代エジプトではファラオを神の代理人と信じて文明を築き上げ、イスラーム文明の時代にはイスラーム教を信じ、受け入れ、その文明の中心的存在になるほどに栄えた。「信奉」さえあれば、エジプト人の力は計り知れないものとなる。

批判・否定に終始する今のエジプト人

では今、何をすべきか。

数週間前、エジプト人の仲間と会う機会があった。「古代エジプトの時代はすごい。あれほどエジプトが発展していたことに本当にいつも驚く。しかし、あれだけ進んでいたのに、一体どうしてこんなにだめになってしまったのか」と話が盛り上がった。

この問題に対して一般のエジプト人は問題意識を持っているはずなのに、なぜ状況はちっとも良くならないのだろうか。
 
どこが問題かと自分なりに考えることが多いが、とにかく国の問題や将来の話題となると大抵のエジプト人が熱く議論はするものの、皆が皆を厳しく批判・否定することに終始する場合が多い。エジプトに限った話ではないかもしれないが、自らを省みるよりも、他人を評価し、正そうとする傾向が強いのだ。

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