最新記事
BOOKS

現代のDVにつながっている例も...日本兵たちの「戦争トラウマ」が数十年後にまで影響

2025年8月17日(日)19時30分
印南敦史(作家、書評家)
広島で開かれた平和記念式典で祈りをささげる人々

今年で終戦から80年が経つが、「戦争トラウマ」は今も引き継がれているという(8月6日、広島で開かれた平和記念式典で祈りをささげる人々) REUTERS/Kim Kyung-Hoon

<戦場で過酷な体験をした元日本兵たちが負った心の傷は、世代を超えて引き継がれている。その衝撃の記録>

終戦から80年目の節目ということで、今年は例年よりも戦争関連の報道が多く、人々の関心も高いように思える。もちろん節目があるかどうかに関わらず、常に戦争について考えることは大切なのだが。

私もできる限り戦争関連の書籍には目を通すことにしているが、最近読んだなかで特に印象的だったのが『ルポ 戦争トラウマ――日本兵たちの心の傷にいま向き合う』(後藤遼太、大久保真紀・著、朝日新書)だ。その名のとおり、戦争で心に傷を負った人たちが向き合っている真実を浮き彫りにしたルポルタージュである。


 残念ながら、戦場で過酷な体験をした元日本兵たちによってトラウマが家や社会に持ち帰られ、心的外傷後ストレス症(PTSD)として現れ、いまもその影響は世代を超えて続いています。戦争トラウマは、決して過去の問題ではありません。目を転ずれば、2000年代になってやっと社会問題として捉えられるようになった子ども虐待や家庭内暴力(DV)の背景には「戦争トラウマ」の姿が見え隠れしています。(「まえがき」より)

2023年8月から朝日新聞紙面やデジタル版に掲載されてきた「戦争トラウマ」に関する連載などに加筆修正して収録したもの。特筆すべきは、子や孫などへの影響にまで焦点を当てていることである。

戦争トラウマと聞くと、従軍によって精神的な外傷を負ってしまった人々を思い浮かべるかもしれない。しかし現実にはその世代だけで終結する問題ではなく、第2、第3世代にも大きな影響を与えているのだという。

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アルミに供給不安、アフリカ製錬所が来年操業休止 欧

ビジネス

川崎重社長、防衛事業の売上高見通し上振れ 高市政権

ワールド

インド中銀総裁「低金利は長期間続く」=FT

ビジネス

シャドーバンキング、世界金融資産の51% 従来型の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中