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トランプ関税

「トランプ関税」が同盟を壊す日...揺らぐ信頼、加速するアメリカ離れ

Trust-Destroying Tariffs

2025年7月14日(月)17時34分
ファム・クアン・ヒエン

長期的には裏目に出る

関税はもはや従来の保護貿易の手段ではなく、アメリカの影響圏外で築かれる経済連携を分断するための強制的手段となっている。米政権は経済的負担を暗黙の抑止力に用い、途上国の戦略の足かせとなる2国間圧力をかけている。

特に注目すべきは、日本や韓国など同盟国への関税措置だ。長年アメリカは貿易競争と安全保障の間に一線を引いてきたが、今回の関税措置はその線を曖昧にしてしまった。日本と韓国からの輸入品に対する25%の関税は、単に経済的利益の話ではなく、アメリカは同盟国でも特別扱いしない、という意思表明でもある。


中国と北朝鮮という安全保障上の脅威に直面する日本と韓国にとって、アメリカから経済的ライバル扱いされることは戦略的信頼を失うことを意味する。

日本では、独立した防衛政策や米依存からの脱却を求める声が強まるだろう。韓国では、米韓同盟に戦略的効果はあるのかとの議論が続きそうだ。その結果、かつて安全保障秩序の基盤を成したものが、経済的圧力によって形を変えてしまう恐れがある。

東南アジアでの影響はより広範囲に及ぶ。緊密な同盟国すら貿易面で保護されないなら、米政策の一貫性を信頼することは難しい。こうした状況は、戦略的バランスを模索する動きを加速させる──域内統合を促進するか、中国やインドなど地域大国との協力関係を強化するか、だ。

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