最新記事
北朝鮮

女子高生の合宿中、「禁断の遊び」がバレて「吊し上げの刑」に...北朝鮮、過酷な刑罰の実態

2025年2月13日(木)16時55分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載
北朝鮮の学校に通う生徒

Torsten Pursche/Shutterstock

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は5日、北朝鮮の人権の実態をまとめた報告書を公表した。拘禁施設、表現の侵害、食糧問題などを取り上げ、北朝鮮に説明責任と措置を求めた。

■【関連記事】北朝鮮、幹部の「ご令嬢」女子高生ら20人が見せしめの刑に処された「禁断の遊び」

2022年11月から2024年10月31日までの北朝鮮の人権状況を扱ったこの報告書には、脱北者175人が証言した強制失踪、拉致、海外に派遣された労働者の強制労働、女性の人身売買などに関する内容が盛り込まれている。

(参考記事:北朝鮮女性を追いつめる「太さ7センチ」の残虐行為

報告書は、「反韓流三法」と言われる反動思想文化排撃法、青年教養保障法、平壌文化語保護法も取り上げ、これを根拠にして死刑など刑罰の重罰化が行われ、表現の自由に対する抑圧がエスカレートしているとも指摘した。いずれも、国家に「表現の自由と情報アクセスの権利を保護」することを義務付けた、世界人権宣言と自由権規約第19条に反する行為だ。

これら三法のうち、最高刑を死刑と定めているのは反動思想文化排撃法と平壌文化語保護法の二つだ。前者は韓流コンテンツの取り締まり、後者は韓国式の話し方の規制に重点を置いている。

特に異様なのは後者の第35条だ。


第35条(公開闘争による教養)

社会安全機関をはじめとする該当法機関は、資料暴露や群衆闘争集会、公開逮捕、公開裁判、公開処刑などの公開闘争を様々な形式と規模で正常に行い、腐りきった傀儡文化に汚染された者どもの気を打ち砕き、広範に群衆を覚醒させなければならない。

法の条文に「公開処刑」と明記するのは、北朝鮮においても極めて珍しい例だ。

筆者の知る限り、同法に違反したとして、実際に死刑になったという話はまだ出ていない。だが2023年の4月、スポーツ合宿中の娯楽会で「しりとりゲーム」をした女子高生ら20人が吊し上げられた事件があった。「オトナ」のいない自分たちだけの空間で楽しんでいたのだが、思い出に動画を撮影していた生徒の携帯電話がたまたま安全員(警察官)に没収されたことで、発覚してしまったのだ。

(参考記事:北朝鮮の女子高生が「骨と皮だけ」にされた禁断の行為

死刑こそ免れたものの、刑罰は苛烈だった。

当局は、駅前広場に国営企業や団体の職員、学校の生徒などを動員した上で、公開暴露の集いで吊し上げにし、娯楽会に参加した者、韓国式の言葉が使われたことを知りながら通報しなかった者を含め、被告となった生徒20人に3年から5年の労働教化刑(懲役刑)の判決を下した。

死刑にはならなかったとは言え、たかが「しりとりゲーム」で懲役とは重すぎる罰だ。

OHCHRの報告書は、こうした「犯した罪」に釣り合わない重罰も問題視している。しかし金正恩総書記が韓国への敵視を強め、その影響を一掃を期している状況を考えれば、こうした傾向は今後もひどくなる一方だと思われる。

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。

dailynklogo150.jpg



ニューズウィーク日本版 習近平独裁の未来
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年2月17号(2月10日発売)は「習近平独裁の未来」特集。軍ナンバー2の粛清劇は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」強化の始まりか

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


日本企業
変わる「JBIC」...2つの「欧州ファンド」で、日本のスタートアップ支援に乗り出した理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=急落、AI懸念でハイテク株売り強まる

ビジネス

NY外為市場=ドル横ばい、経済指標が強弱まちまち 

ワールド

EU首脳、競争力強化加速で合意 米中優位に危機感共

ビジネス

再送-〔マクロスコープ〕企業物価、国際商品に投機資
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベルの「若見え」な女性の写真にSNS震撼
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 5
    あなたの隣に「軍事用ヒト型ロボット」が来る日
  • 6
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 7
    「ショックすぎる...」眉毛サロンで「衝撃的な大失敗…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 10
    エプスタイン疑惑の深層に横たわる2つの問題
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 9
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中