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荒川河畔の「原住民」(19)

「ホームレスになることが夢だった」日本人男性が、本当にホームレスになった

2025年1月24日(金)06時30分
文・写真:趙海成

征一郎さんは社会や他人に迷惑をかけたくないと思っていて、無一文になっても、物乞いはしないという。

実際、生きていけないほどの苦境に陥るたびに、いっそ自分を餓死させようと考えるそうだ。公園のベンチに横になって、何も食べずに気絶すれば死ぬことができると思って、本当に実行してみたこともある。

でも結局は失敗に終わったという。なぜなら、食事を止めただけで水を飲むことを止めなかったからだ。

公園の水道水は無料で、自由に飲める。水は生命維持の根幹であり、健康な人は食べ物がなくても水だけで2~3週間程度は生きることができる。体が弱い人でも、10日ぐらいなら生きていけそうだ。

餓死がこんなにも時間がかかって苦しいだけだと気づいた征一郎さんは、途中でやめてしまった。無料の水道水という誘惑のおかげで、征一郎さんは生き延びたのだ。

コンビニのアルバイトの女の子に恋をした

成人になってからの征一郎さんは孤独なように見えるが、若い頃の写真を見ると女の子にモテていそうだった。

彼が見せてくれた数十年前の写真には、制服を着た中学生5人が写っていた。真ん中の征一郎さんを囲むように女子生徒がいる。もう一人の男子生徒は地面に座っている。この記念写真は、彼がモテていたという1つの記録と言えるだろう。

社会人になって働き出してから、一人の女の子を本気で好きになった話を教えてくれた。コンビニでアルバイトをしている女の子がいて、征一郎さんが買い物に来るたびに、いつも笑顔で挨拶をしてくれたという。

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