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トランプは「冷戦2.0」に勝てるのか?外交での3つの選択肢

Can Trump Win Cold War 2.0?

2024年12月18日(水)16時31分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)

「悪人役」で実利を得る

MAGAの論理では、アメリカはかつて最強の超大国だったが、他国の紛争に関与しすぎて自国経済の中核の製造業が空洞化し、弱体化したとされている。

敵対勢力との対立が再燃し同盟国の足並みがそろわないなか、弱体化の影響は甚大で、アメリカを再び偉大な国にするには主要な敵(中国とロシア)との戦いだけに資源を集中させるべきだ──。


この考えは、トランプ政権1期目に国防総省が発表した2018年版国家防衛戦略で明確に示された。

20年にはマーク・エスパー国防長官が中国をアメリカの「ペーシング脅威(仮想敵)」、つまり経済、技術、政治、軍事など多方面で自国の不安定な優位性を揺るがす能力と意図を持つ唯一の大国だと初めて明言。

優位性が揺らぐ事態を防ぐため、国防総省は軍に対し「敵によるアメリカの国益侵害を抑止する」「同盟国を軍事侵略から守り、抑圧に対抗できるよう支える」「共同防衛責任を公平に分担する」といった目標を示した。

さらにトランプはNATO加盟国に「公平な分担」、すなわちアメリカに頼らずにロシアを抑え込むよう圧力をかけた。

狙いは中国との戦いに集中すること。

トランプは米軍の縮小をちらつかせる「悪人役」を演じ、「善人役」のジョージ・W・ブッシュやバラク・オバマにはできなかったことを実現した。

利己的な孤立主義と批判されがちなトランプだが、公平に見ればその批判は当たらない。

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