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トランプ2.0で円安が進むなら、日本経済には「ショック療法」が必要だ

Japan's Shock Treatment

2024年12月14日(土)18時48分
浜田宏一(元内閣官房参与、エール大学名誉教授)

財務当局の介入は長期的な影響力を持たない

さて、新任の石破茂首相とトランプ大統領の下ではどのような日米の経済関係が予想されるだろうか。

第一に、トランプのアメリカは各国の防衛は各国に任せるという孤立主義の傾向を強めるであろう。いまアジアには中国や北朝鮮の軍事力拡大、そして台湾の問題など日本にとっての脅威が多いが、アメリカは「いつまでも他国の守り神ではない、各国も自前で守れ」という要求が米側から提出される公算が強い。日本も自主防衛能力を高め、財政負担を増加することを求められる。

第二に、大統領の姿勢が「強いアメリカ」を目指すと受け取られるとドル高、つまり円安の傾向が強くなるかもしれない。確かにアベノミクス以前のデフレ、不況を招いたように継続的な円高も望ましくないが、逆に現在のように極端な円安も日本投げ売りに近く、将来的なインフレの危険も多い。

変動制の世界で名目為替レートを基本的に決定できるのは当該国の金融政策、つまり円ドルの場合には日米の通貨政策である。

アベノミクス、そして異次元金融緩和以前の日本経済は、日本から生産品を輸出しようとしても外国で売れない状態だった。日本経済は失業に悩み、非正規労働者は低賃金に苦しみ、日本で生産しても利益が上がらないので対外投資だけが伸びた。このような「低圧経済」の状況で新機軸や生産性改善は起こりにくかった。

黒田東彦総裁による異次元金融緩和はこの状態を打ち破って、13年のはじめから新型コロナ禍の始まる19年第4四半期までに、日本経済に500万人の就業者の増加をもたらした。

為替レートは通貨間の相対価格であるから、その最も重要な要因は世界で保有されている円建て資産とドル建て資産との相対比率である。したがって日米の通貨政策が最も重要な為替レートの決定要因であり、財務当局の介入は長期的な影響力を持たない。

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