最新記事
パキスタン

パキスタンの空港近くで「中国人狙い」の爆破テロ──反政府武装勢力が犯行声明

Chinese targeted in Karachi airport bombing

2024年10月8日(火)19時23分
シャミム・チョウドリー
中国人2人が死亡した爆破テロ

中国人を乗せた車列は、空港を離れるところを爆弾テロに襲われた(10月6日) Reuters/YouTube

<中国人2人が死亡した爆破テロで犯行を認めた反政府勢力は、「一帯一路」構想の一環でインフラ開発に携わる中国人を敵視している>

パキスタン南部の都市カラチにある国際空港の近くで10月6日の夜に爆発があり、中国人2人が死亡したほか8人が負傷した事件について、パキスタンからの分離独立を求める反政府武装勢力、バルチスタン解放軍(BLA)が犯行声明を出した。爆発は自爆テロによるものだったという。

【動画】「中国人を狙った」爆弾テロが再び

パキスタンでは10月15日と16日に、中国とロシアが西側の影響力に対抗するために設立した安全保障同盟、上海協力機構(SCO)の首脳会議が開催される予定だが、今回の事件を受けて、首脳会議に伴う諸外国の要人の安全確保に懸念の声が上がっている。

パキスタンの各ニュースチャンネルは、複数の車両が炎に包まれ、現場から濃い煙が立ちのぼる様子や、軍や警察が現場一帯を封鎖する映像を放送した。対テロ当局者たちは、実行犯がどのようにして警備を突破することができたのか調査を進めている。

BLAの報道官であるジュナイド・バロチは今回の自爆テロについて、同空港に到着した中国人のエンジニアや投資家の車列が標的だったと述べた。BLAはパキスタン南西部にあるバルチスタンを拠点としており、過去にもパキスタン国内で外国人や治安部隊を標的にした攻撃を行っている。

首脳会議を前に攻撃の恐れも

イスラマバードにある在パキスタン中国大使館は、標的となった車列に乗っていた人物の中には、中国とパキスタンの合弁会社が開発した石炭火力発電所「ポート・カシム電力」のスタッフが含まれていたことを確認した。

パキスタンの治安当局によれば、車列が移動を始める前に、空港の外の道路は爆発物処理班が安全を確認していた。だがAP通信に匿名で話をした関係者によれば、地元住民や旅行者の利便性のために、道路は完全には封鎖されていなかったという。

パキスタン外務省は事件を「凶悪なテロ攻撃」と非難し、犠牲者の家族に哀悼の意を表した。パキスタンのシェバズ・シャリフ首相はBLAを「パキスタンの敵」と非難、テロに関与した者を必ず処罰すると断言した。

「この許しがたい行為を強く非難し、中国の指導部および国民の皆様に心からの哀悼の意を表明する」とX(旧ツイッター)に投稿し、「パキスタンは中国の友人たちの安全を守ることを約束する。彼らの安全と安心を守るために全力を尽くす」と中国に気を遣った。

アメリカからもパキスタンからもテロ組織に指定されているBLAは、約3000人の戦闘員を抱えているとみられ、パキスタンの治安部隊を標的とした攻撃を頻繁に行っている。アナリストはBLAについて、近年では人々の注目を集めるような攻撃を行う能力が向上していると述べており、上海協力機構の首脳会議に向けてさらなる攻撃の可能性が高まっているとみている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 6
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 7
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 8
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中