最新記事
米大統領選

トランプ演説は「結局いつもの悪口」...党のイメージ刷新努力が台無しに 

2024年7月19日(金)18時46分
トランプ前大統領とメラニア夫人

米共和党は中西部ミルウォーキーで4日間にわたり全国大会を開催し、登壇した多くの演説者はトランプ前大統領が暗殺未遂を経て愛情深く思いやりのある家庭人に変わったと印象付けようと試みた。18日撮影(2024年 ロイター/Elizabeth Frantz)

米共和党は中西部ミルウォーキーで4日間にわたり全国大会を開催し、登壇した多くの演説者はトランプ前大統領が暗殺未遂を経て愛情深く思いやりのある家庭人に変わったと印象付けようと試みた。

18日夜のトランプ氏による指名受託演説の序盤は、大統領選で鍵を握る無党派層に受け入れられるよう謙虚で人々を結束させる人物に見せる計画に合わせているように見えた。

トランプ氏は死と隣り合わせになったことを受けて、当初予定していた演説を書き換え国民に団結を訴えると今週米紙ワシントン・エグザミナーに述べていた。


 

実際に演説の最初の数分間はそうした姿勢が見られた。民主党を含む全ての国民のための大統領になりたいと述べ、分裂した国を癒したいと呼びかけた。13日に起きた暗殺未遂事件について詳しく語り、事件は自身に強い影響を与えたと述べた。

「政治があまりにも頻繁にわれわれを分断する時代において、今こそわれわれは同じ市民であることを思い出す時だ」と語りかけた。

だがこの刷新されたトランプ氏の姿勢は30分しか続かなかった。その後は対立候補を悪者にして喜び、大げさな侮辱の言葉を投げつけるいつものトランプ氏に戻った。共和党全国委員会が丹念に練り上げた団結のメッセージを台無しにした。

大会史上最長となる92分に及ぶとりとめのない演説で、民主党のバイデン大統領を「米国史上最悪の大統領」と決めつけ、ペロシ元下院議長を「頭のおかしいナンシー・ペロシ」とこき下ろした。

「民主党は司法制度を武器にして敵に民主主義の敵というレッテルを貼ることを直ちにやめるべきだ。これは真実ではない。私は米国民のために民主主義を救っている」と訴えた。

米国への不法移民は「史上最大の侵略」であり、毎年何十万人もの米国人の死につながっていると述べた。どちらの主張もデータによって裏付けられてはいない。

米国は崩壊し衰退しつつあり、都市には犯罪がまん延し経済は落ち込んでいるという暗いイメージを描き、自らを救世主として売り込む定番の演説と化した。

共和党のストラテジストでトランプ氏に対して批判的な立場を取るメアリー・アンナ・マンキューソ氏は「今回はもっとソフトな一面を見せ、違うトランプ氏になると聞いていた。しかし演説は国民を団結させるためのものではなかった。これまでと同じトランプ氏であり、違いはなかった」と述べた。

ただトランプ氏は集会でよく使う最も辛辣(しんらつ)ないくつかの言葉を避けていた。いつもはバイデン氏を衰弱した大統領とやゆするが、今回はバイデン氏の名前に言及したのは2回だけだった。

別の共和党のストラテジスト、フランク・ランツ氏は演説があまりに長く開始時間も遅かったため、多くの視聴者は最初の30分しか見なかったはずだと述べ、「完璧」だったと評した。

通常の攻撃の最も激しい要素は抑えられており、典型的なトランプ氏のスタイルだったが、普段よりもとがった部分が少なかったと語った。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 中国EVと未来戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年10月14日号(10月7日発売)は「中国EVと未来戦争」特集。バッテリーやセンサーなどEV技術で今や世界をリードする中国が戦争でもアメリカに勝つ日

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米週間失業保険申請件数、政府機関閉鎖で増加=エコノ

ワールド

赤沢経済再生相とラトニック米商務長官が電話会談

ビジネス

9月国内企業物価指数は前年比+2.7%、前月から横

ワールド

対ロ追加制裁巡るトランプ氏の支持不透明、同盟国当惑
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル賞の部門はどれ?
  • 3
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 4
    あなたは何型に当てはまる?「5つの睡眠タイプ」で記…
  • 5
    50代女性の睡眠時間を奪うのは高校生の子どもの弁当…
  • 6
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 7
    史上最大級の航空ミステリー、太平洋上で消息を絶っ…
  • 8
    米、ガザ戦争などの財政負担が300億ドルを突破──突出…
  • 9
    底知れぬエジプトの「可能性」を日本が引き出す理由─…
  • 10
    いよいよ現実のものになった、AIが人間の雇用を奪う…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレクトとは何か? 多い地域はどこか?
  • 3
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最悪」の下落リスク
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    赤ちゃんの「耳」に不思議な特徴...写真をSNS投稿す…
  • 6
    iPhone 17は「すぐ傷つく」...世界中で相次ぐ苦情、A…
  • 7
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 8
    祖母の遺産は「2000体のアレ」だった...強迫的なコレ…
  • 9
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 9
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 10
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中