最新記事
中東情勢

「いずれ地上作戦も実行」「ハマスはISと同等のテロ組織」...駐日イスラエル公使が語ったパレスチナ政策の行方

2023年11月1日(水)17時20分
山田敏弘(国際ジャーナリスト)

いつ状況が落ち着くのかについては誰もわからない。公式な立場は明確だ。現状に対処し、ハマスという組織の基盤を破壊すること。つまり政治的にも軍事的にも、である。そう考えれば、地上作戦もどこかのタイミングで実行されるだろう。状況が揃うまで待機している状態で、そう考えると、戦闘はまだ終わらないだろう。

また北部も懸念だが、10月7日朝のハマスのテロ攻撃によって、イスラエルはさらなる挑発に対する忍耐力がかなり低くなっている。北部の動きは注目である。イスラエルの予備役についても、世界中からイスラエルを守る国防軍に参加するために大勢が集結し、予備役の数は140%以上にも増えている。

──今回、イスラエルがハマスの攻撃を食い止められなかったのは情報当局などに責任があるという批判もある。

これについては、これから調査が行われるはずで、それには時間がかかるだろう。現在は、まだ検証する段階ではない。

経済部門の担当公使が語った「日本への影響」

公使のインタビューは以上だが、実は筆者は先日、テレビ愛知の夕方のニュース番組に出演した際に、愛知県の企業がビジネス関係のあるイスラエル企業との連絡が滞っていると聞いた。それ以外にも今回の大規模テロを受けて、イスラエルとビジネスを行っている、または、これからビジネスを行う予定の日本企業など一部で不安が広がっていた。

そこでイスラエル大使館で経済部門を担当するダニエル・コルバー経済担当公使兼経済貿易ミッション代表にも話を聞いた。

──今回の大規模攻撃を受けて、10月10日に予定されていたイスラエル経済産業省ニール・バルカット大臣の来日が中止になった。日本とイスラエルのビジネス関係にどんな影響がでそうか。

一般的に戦争など混乱が起きると経済的にも対応しなければならないことが出てきますが、イスラエルの場合は対応に慣れているということがあります。ミサイルが飛来したり、国民が予備役に招集される状況にも、過去何十年という経験があるので、どう対応すべきかについてはわかっています。

実際に、イスラエル企業は、これまでと同じく日本企業ともミーティングを行っています。来日しているイスラエルの企業関係者もいますし、新しい契約が締結されたりもしています。またテクノロジー部門では、物品のやり取りではなく、ソフトウェアを扱うのでビジネスに支障はありません。

国民の中には緊急事態に対応しないといけない人もいるので、コミュニケーションがスローになっているところも一部あるかもしれませんが、引き続きこれまで通りのビジネスをしてもらえると思います。

◇ ◇ ◇

イスラエルとガザ地区では、まだ先行きが見通せない情勢は続くだろう。しばらくは、中東から目は離せない。

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

米債市場の動き、FRBが利下げすべきとのシグナル=

ビジネス

米ISM製造業景気指数、4月48.7 関税コストで

ビジネス

米3月建設支出、0.5%減 ローン金利高騰や関税が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中