最新記事

AI

「もしこの技術が悪用されたら大変なことになる」──チャットGPT開発のアルトマン氏が自ら警告

ChatGPT Creator Is Worried About AI

2023年5月17日(水)18時09分
ニック・モルドワネック

米議会の公聴会でAIの規制を支持したチャットGPT開発者のサム・アルトマン(5月16日)  Elizabeth Frantz-REUTERS

<チャットGTPの生みの親サム・アルトマンをはじめ、米議会で証言したAI の権威たちはAI の暴走を警告>

対話型AI(人工知能)サービス「チャットGPT」を開発したオープンAI のサム・アルトマンCEOは5月16日、人工知能(AI)の将来について懸念を表明し、意図しない結果が起きる可能性があるため、規制が必要だと警告した。

米議会上院司法委員会で証言したアルトマンは警戒を促す口調で、誤情報の増加、選挙妨害、コンピュータが人間の従業員にとって代わり、人工の存在が人間そのものよりも賢くなる、といった苦境に陥る可能性を秘めた暗い未来像を描き出した。

金融情報サイト「ナードウォレット」によれば、AIに対する懸念はこれまで常に存在してきたが、最近は、アルトマンの会社を含むテック企業が未開拓分野の先取りをめざして何十億ドルもの投資を行っていることから、特にその懸念が深刻化しているという。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、AI分野の基礎研究の第一人者でAIの「ゴッドファーザー」と呼ばれるジェフリー・ヒントンは「悪意のある人間が(AIを)悪いことに使うのを防ぐ」ためにグーグルを退職し、AIの能力について警告している。

チャットGPTを開発したアルトマンも、米議会で証言する初めての機会に、同じような意見を述べた。

「もしこの技術が悪用されたら、かなりまずいことになると思う」と、アルトマンは議員たちに語った。「そのことを声を大にして訴えていきたい。そんなことが起こらないように、政府と協力したい」。

緊急に規制が必要

司法委員会の議長を務めるリチャード・ブルメンタール上院議員は、「人工知能は、その計り知れない将来性と落とし穴に対処するためのルールとセーフガードを緊急に必要としている」と述べた。

民主党のエイミー・クロブシャー上院議員から、今後の選挙にAIが与えるかもしれない影響について、アルトマンは「かなり懸念している」と述べた。

「AIはソーシャルメディアではない。まったく違う」と彼は答えた。「だから、必要とされる対応も違う。AIは、ユーザーがより効率的にコンテンツを生成するために使うツールだ。ユーザーはこのツールを変えることができるし、正確さをテストすることもできる。気に入らなければ、別のバージョンを使うこともできる」

AIについて声をあげているノースウェスタン大学法学部のジョン・マクギニス教授は、本誌の電話取材に対し、テック業界の第一人者たちの懸念を共有することにためらいを感じていると語った。彼は、悪意のある人の手に渡ったツールは問題につながる可能性があるというヒントンの意見に同意したが、AIそのものが暴走して悪意に満ちたものになるとは考えていないようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏「いかなる次期米大統領とも協力」、外国メ

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、予想上回る米ISM指標受け

ワールド

バイデン氏、モディ首相勝利に祝意 インド太平洋で協

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック最高値更新、FRB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナの日本人
特集:ウクライナの日本人
2024年6月11日号(6/ 4発売)

義勇兵、ボランティア、長期の在住者......。銃弾が飛び交う異国に彼らが滞在し続ける理由

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 2

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 3

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 4

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 5

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 6

    世界各国の王妃たちに「好印象」を残した、キャサリ…

  • 7

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    昨年は計209匹を捕獲...18歳未満でも参加可、フロリ…

  • 10

    ロシアが「世界初」の地上型FPVドローンを開発、「竜…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しすぎる...オフィシャル写真初公開

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「…

  • 6

    「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新た…

  • 7

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 9

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 10

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中