最新記事
朝鮮半島

米韓首脳会談、米国の戦力で韓国の防衛に関与する「拡大抑止」強化へ 対北朝鮮情報共有や潜水艦派遣も

2023年4月27日(木)11時02分
ロイター

シンクタンク、ウィルソン・センターのスー・ミ・テリー氏は今回の動きについて、韓国が核武装するのを阻止する狙いがあると指摘。その上で、「韓国の世論が納得するかどうかは未知数だ」とし、北朝鮮が2017年以来となる核実験を再開すれば、韓国では警戒心が高まり、独自の核兵器を求める声や米国の戦術核を国内に再展開する声が高まるだろうと述べた。

米当局者によると、米国はワシントン宣言の下、地域におけるあらゆる核問題の抑止と対応に関する米国の有事計画の詳細などを米韓原子力協議会を通じて韓国に伝える。また、米国は武力示威のために弾道ミサイル潜水艦を韓国に配備する。こうした潜水艦の配備は1980年代以来初めてという。

ただバイデン大統領は、米国が韓国に核兵器を配備することはないと明言。「最高司令官として核兵器を使用する絶対的な権限を持っているが、ワシントン宣言が意味するのは、何らかの行動が必要となった場合、同盟国と協議するためにあらゆる取り組みを行うということだ」と述べた。

両首脳はまた、台湾海峡の安定を維持することの重要性を強調。「違法な海洋権益の主張、埋め立て地の軍事化、強制的な活動などを含むインド太平洋の現状を変えようとする一方的な試みに強く反対する」とした。

会談に先立ち、バイデン大統領は「われわれは強固な同盟、将来のビジョンの共有、米韓の深い友情を祝う」と述べた。

尹氏も「米韓の同盟は価値ある同盟で、自由という普遍的な価値を守ることを共にする」とし、力によって現状を変更する試みは世界の安全保障を脅かすという認識を示した。

会談では半導体や貿易、ウクライナ情勢を巡る意見交換も行われたほか、サイバーセキュリティーや電気自動車(EV)とバッテリー、量子技術などの分野で合意を得た。

尹氏は韓国大統領としては10年超ぶりに国賓として米国を訪問。バイデン大統領が就任以降、国賓として迎える外国首脳はマクロン仏大統領に続き2人目となる。

今回の首脳会談は、北朝鮮問題が議題の大半を占めた。会談の内容について、北朝鮮の国連代表部からコメントは得られていない。

ワシントンに拠点を置く北朝鮮監視団体「38ノース」のジェニー・タウン氏は今回の合意について「北朝鮮を説得して大量破壊兵器の開発と実験という現在の方針をやめさせることも、韓国内の核の将来を巡る議論を静めることもできない」と指摘。

一方、新アメリカ安全保障センター(CNAS)のアナリスト、Duyeon Kim氏は「これまで米韓が議論することができなかった核抑止力が初めて議論された」とし、ワシントン宣言は「同盟国、特に韓国にとって大きな勝利」だったとの見方を示した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ビジネス
「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野紗季子が明かす「愛されるブランド」の作り方
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米11月中古住宅販売、0.5%増の413万戸 高金

ワールド

プーチン氏、和平に向けた譲歩否定 「ボールは欧州と

ビジネス

FRB、追加利下げ「緊急性なし」 これまでの緩和で

ワールド

ガザ飢きんは解消も、支援停止なら来春に再び危機=国
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中