「返せるはずがない...」W杯の闇──死んだ出稼ぎ労働者の妻たちが、祖国で借金まみれに
Widowed and Helpless
妻が背負う多額の負債
マデシ州に住む寡婦でインド出身のルビ・カトゥンは、ネパール人男性と13年前から結婚していたにもかかわらず、いまだにネパール国籍を取得していない。彼女の夫はいつも国外で働いていて、法的な手続きをする時間もなかった。2年前、夫(当時30歳)はカタールで腎臓病を発症し、帰国後に死亡している。
「夫の死後、私は首都カトマンズに行き、政府の外国人雇用委員会に補償を求めた」とカトゥンは言う。「でも私には国籍がないから、補償は一銭も出ないと言われた」
何の収穫もなかったが、カトマンズへの旅には5万ルピー(約384ドル)もかかった。2人の子供を育てながらホテルの清掃員として働くカトゥンにとって、月収の6倍以上に当たる金額だ。
#PayUpFIFAキャンペーンの掲げる4億4000万ドルはシンボリックな金額だが、その一部でも出れば、借金まみれの寡婦の生活をかなりの程度まで助けることができるはずだ。
シルミタの場合、夫はもともと、カタールでの仕事を斡旋する仲介人に払うために約1400ドルを借りていた。だが最初の仕事はうまくいかず、次の仕事を探すために借金を重ねた。
しかも利息は年利36%。気が付けば借金は5000ドル以上に膨らんでいた。他人の農場で日雇いで働き、1日3~4ドル程度の収入しかないシルミタに、そんな借金を返せるわけがない。
「夫は地元の貸金業者から借りていた」と彼女は言う。「利息はどんどん増えていく。貸金業者は何度も家にやって来て、金を返せという。でも、食べ物を手に入れることさえままならないのに、どうやったら返せる? なのに誰も助けてくれない」