最新記事

軍事

ロシア国内で「軍用機の墜落」が続発...ロシア空軍、戦争どころではない現状

Russian Jets Just Keep Crashing

2022年12月3日(土)19時36分
ブレンダン・コール
ロシアのMiG-31戦闘機

MiG-31戦闘機(2022年5月) Maxim Shemetov-Reuters

<ウクライナ侵攻後のロシア国内で軍用機の墜落が相次いでおり、市民が事故に巻き込まれるケースも少なくない>

ロシアのMiG-31戦闘機が12月2日、離陸から間もなくロシア東部ウラジオストク近郊の森林に墜落する事故が起きた。ウクライナ侵攻後、ロシア国内では同様の航空機の墜落事故が相次いでいるが、いったい何が起きているのか。

■【動画】市民が撮影していたMiG-31墜落の瞬間と、続発するロシア機墜落の動画

ロシア国内の報道によれば、今回の墜落事故はウラジオストクから約50キロに位置するアレクセーエフカ周辺の森で発生。乗組員は脱出したとされるが、けがの状態などについては発表されていない。軍当局によれば、事故は技術的な不具合によるものである可能性があり、森林地帯であるため地上における被害はなかったとしている。

ウクライナ侵攻の開始以降、ロシアでは市民の被害を伴うものを含め、航空機の墜落事故が相次いでいる。独立系メディアThe Bellによれば、「開戦」から10月までの時点で少なくとも10件の事故が発生したという。

10月18日にはSu-34爆撃機が、ロシア南部クラスノダール地方の町エイスクの集合住宅に墜落し、15人が死亡した。同じ10月の23日には、東部イルクーツクでSu-30戦闘機が住宅に突っ込み、少なくとも2人が死亡した。

ロシアによる占領が続くクリミア半島セバストポリでも、ベルベク空軍基地を離陸した直後のMiG-31戦闘機が墜落する瞬間が撮影された。この事故では、乗組員が脱出できなかったとする報道もある。

10月にはSu-25攻撃機が墜落する場面とされる動画が拡散されたほか、6月にはIL-76軍用輸送機が訓練飛行中のエンジン不良により緊急着陸を試み、モスクワ近郊の町リャザンの近くで墜落。炎上する事故が起きた。

熟練パイロットの多くはウクライナで撃墜された

なぜ、これだけ軍用機の墜落が続くのか。英国防相によれば、ロシア空軍は十分な数の乗組員を派遣してウクライナ侵攻を空から支援することにも苦労しているという。さらに空軍の任務を遂行するためには、今では民間軍事会社ワグナーグループの契約社員として働いている退役軍人に頼らざるを得ない状況だという。

バルト安全保障財団の軍事アナリストであるグレン・グラントは本誌に対し、「問題はパイロットよりもメンテナンスにあるとは思うが、パイロットたちも十分な訓練を受けていないと思われる」と語った。「戦争が始まる以前、パイロットたちが受けていた訓練は『最小限』と言えるものだった」

「もちろん(ロシアにも)優秀なパイロットはいる。シリアに派遣された人たちだ」とグラントはいう。だが彼は、そのうちの多くがウクライナで撃墜されてしまったと考えている。「そのため、今では熟練した技術を持つ者は多くないだろう」

またグラントは「最大の問題は(ロシア軍が)メンテナンスに無頓着であることだ」と指摘し、「システム全体が劣化している」とした。「彼らは迅速なトレーニングプログラムを作成するために変更を施すことが苦手なのだ」

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、米株高を好感 ファストリ

ワールド

訂正ブラジル大統領、米50%関税に報復示唆 緊張緩

ワールド

英首相がトランプ氏と会談へ、月内のスコットランド訪

ワールド

米国務省、人員削減計画を近く開始 影響受ける職員に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 7
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 8
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    ハメネイの側近がトランプ「暗殺」の脅迫?「別荘で…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中