最新記事

ロシア

【独占】「プーチンは4月に進行がん治療」「3月に暗殺未遂」米機密情報のリーク内容

Exclusive: Putin Treated for Cancer in April, U.S. Intelligence Report Says

2022年6月4日(土)18時38分
ウィリアム・アーキン(ジャーナリスト、元陸軍情報分析官)

ロシアの外相セルゲイ・ラブロフも、5月末にフランスのテレビでプーチンの重病説を一蹴した。最近の精力的な活動を引き合いに出し、「分別のある人なら、彼に何らかの病気の兆候を見いだすことは不可能だろう」と述べた。

だがDIAの幹部に言わせると、「何も問題はないというラブロフの主張は客観的な診断ではなく、単にプーチンへの忠誠を誓う発言にすぎない」。ならば今も、プーチンは肉体的にも政治的にも難しい状態にあるのだろうか。

プーチンはクレムリン内部の政敵を排除し、自分の配下にある情報機関さえ信用していないのか。彼は本当に死にかけているのか。そうだとして、プーチン後には何が起き、誰が台頭するのか。バイデン政権は、表向きはプーチン重病説を「単なる噂」と一蹴しつつ、実際にはこれらの問題を精査している。

「仮に、その情報は信頼できると判断したとしても彼の賞味期限がいつ切れるかは分からない」と、ODNI幹部は言う。「プーチンなきロシアに(早まって)支持のサインを送るわけにもいかない」

口を滑らせたバイデン

ちなみにバイデン大統領とロイド・オースティン国防長官は口を滑らせ、ロシアつぶしの意図をほのめかしてしまったが、2人ともその後に慌てて撤回している。「プーチンが元気だろうと病気だろうと、失脚しようとしまいと、ロシアが核武装している事実に変わりはない。こちらがロシアをつぶす気でいるなどと、向こうに思わせるような挑発はしないこと。戦略的安定の維持にはそれが不可欠だ」と、このODNI幹部は付け加えた。

DIAの幹部も、プーチンが病気で死にかけているとすれば、それは「世界にとって好ましい」ことだと言いつつ、「ロシアの未来やウクライナ戦争の終結につながるだけでなく、あの狂人が核兵器に手を出す脅威が減るからだ」と説明した。「弱くなったプーチン、つまり盛りを過ぎて下り坂の指導者は、自分の補佐官や部下を思いどおりに動かせない。例えば、核兵器の使用を命じた場合とかに」

確かに、全盛期のプーチンなら閣僚や軍部の反対を押し切って思いどおりの決断を下せただろう。しかし傷ついたプーチンは「もはや組織を完全に牛耳ってはいない」ようだから、そう好きなようにはできないという。

「プーチンが病気なのは間違いない......が、死期が近いかどうかは臆測の域を出ない」。このDIA幹部はそうも言った。「まだ確証はない。こちらの希望的観測を追認するような情報ばかり信じて、自分の疑問に自分で答えを出すのは禁物だ。今もプーチンは危険な男であり、もしも彼が死ねば混乱は必至だ。私たちはそこにフォーカスしている。君も、備えは怠るな」

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中国防相が会談、ヘグセス氏「国益を断固守る」 対

ビジネス

東エレク、通期純利益見通しを上方修正 期初予想には

ワールド

与野党、ガソリン暫定税率の年末廃止で合意=官房長官

ワールド

米台貿易協議に進展、台湾側がAPECでの当局者会談
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中