最新記事

津波

震源から1万キロ以上、大西洋、太平洋、インド洋に広がった津波の謎が明らかに

2022年2月10日(木)18時55分
松岡由希子

大西洋、太平洋、インド洋に津波は広がった NOAA Center for Tsunami Research

<2021年8月、南大西洋のサウスサンドウィッチ諸島を震源に震源から1万キロ以上にわたって、大西洋、太平洋、インド洋に広がっていた。その原因が解明された......>

2021年8月13日、南大西洋のサウスサンドウィッチ諸島を震源とする地震が発生した。アメリカ地質調査所(USGSは、震源の深さを47.2キロ、地震の規模をM(マグニチュード)7.5と推定した。

震源から1万キロ以上、大西洋、太平洋、インド洋に広がった津波

この地震による津波は、太平洋沿岸の米アラスカ州キングコーブ、インド洋のロドリゲス島など、震源から1万キロ以上にわたって、大西洋、太平洋、インド洋に広がった。3つの海洋で津波が記録されたのは、2004年12月のスマトラ島沖地震以来となる。

August 12, 2021 South Sandwich Islands tsunami propagation


47.2キロという震源の深さで、これほどの津波を引き起こすことはない。そこで、米カリフォルニア工科大学の金森博雄名誉教授らの研究チームは、地震データを改めて検証し、2022年2月8日、「この地震は単発地震ではなく、約260秒間に5回の地震が発生していた」とする研究論文を学術雑誌「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ」で発表した。

震や津波をモニタリングする既存システムの見直しが必要

研究チームは、500秒もの長周期の地震データを用いて分析し、3回目の地震が深さ15キロの地点で発生したM8.16の地震であったことを突き止めた。一連の地震で放出されたエネルギーの70%をこの地震が占め、200キロのプレート境界を破壊したものの、短周期や中周期のデータではほぼ見えない。

研究論文の筆頭著者でカリフォルニア工科大学の博士課程に在籍する賈哲氏は「3回目の地震は大きく、静かだった点で特別だ。我々が通常、地震モニタリングで見ているデータでは、この地震はほとんど見えない」と解説する。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ウォルツ大統領補佐官解任へ=関係筋

ビジネス

物言う株主サード・ポイント、USスチール株保有 日

ビジネス

マクドナルド、世界の四半期既存店売上高が予想外の減

ビジネス

米KKRの1─3月期、20%増益 手数料収入が堅調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 8
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 9
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 10
    【徹底解説】次の教皇は誰に?...教皇選挙(コンクラ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中