最新記事

ドイツ

メルケル後のドイツを揺るがす「極右に熱狂する」旧東独の反乱

Still Divided After 30 Years

2021年7月15日(木)20時21分
エミリー・シュルトハイス(ジャーナリスト)

旧西独圏では伸び悩むAfDも、東部では今や主要政党の1つだ。東部5州全てで第2党につけており、時には投票総数の4分の1以上を獲得することもある。

しかも東部のAfD党員、例えばチューリンゲン州のビョルン・ヘッケや元ブランデンブルク州支部代表のアンドレアス・カルビッツらは西部の党員よりも急進的だ。

対照的に、「緑の党」は東部で振るわない。全国規模の世論調査では一貫して支持率2位につけ、次期連立政権への参加も確実視されているのに、東部では左派系の一部の都市を除けば苦戦している。逆に、旧共産党の流れをくむ「左派党」は西部より東部で善戦している(ただし近年はAfDに押されて従来の勢いを失いつつある)。

世論調査会社フォルサによる直近の調査で、緑の党の支持者は西部で26%、東部で12%。AfDは東部で21%で2位だが、西部では7%。東西で平均して支持されているのは現与党のCDUだけだ。

「再統一から30年たっても、まだ一つじゃない」と言ったのはフォルサの政治アナリストのペーター・マツチェックだ。「依然として2つの異なる有権者集団がある」

問題の根源は壁の「崩壊後」にあった

今年行われた3つの州選挙には、そうした投票傾向の違いが明確に表れた(新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあっただろうが)。

南部バーデン・ビュルテンベルク州と西部ラインラント・プファルツ州で3月中旬に行われた地方選では、AfDが大敗を喫し、緑の党が議席を増やした。

ラインラント・プファルツ州ではAfDの得票率が8.3%で、前回の16年に比べて4.3ポイント減。緑の党は4ポイント伸ばして9.3%だった。

バーデン・ビュルテンベルク州では、11年から州首相を出している緑の党が2.3ポイント増の32.6%を獲得。対照的にAfDは15.1%から9.7%に下げ、州内の支持者の3分の1近くを失った。

一方、AfDは地盤のザクセン・アンハルト州の6月6日の投票で、(新型コロナの影響で支持率が落ちたとはいえ)20.8%を獲得した。16年の選挙時に比べると微減だが、全国平均の得票率の2倍以上だった。

なぜこれほどの違いが出るのか。少なくとも筆者の取材した範囲では、遠い昔の「社会主義」の残滓より、むしろベルリンの壁「崩壊後」の事態に問題がありそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ政権の「敵性外国人法」適用は違法 連邦地裁

ビジネス

伊藤忠商事、今期2.2%増益見込む 市場予想と同水

ワールド

米予算教書、FBIや麻薬取締局の予算削減と関係筋 

ワールド

トランプ氏、2日に予算教書公表 環境・対外援助など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中