最新記事

感染症

馬の感染症が急速に世界に広がり警戒強まる 欧州イベントすべてキャンセルに

2021年3月12日(金)16時25分
冠ゆき
スペインの馬

今回の流行はスペインで2021年2月に開催された国際障害飛越競技会で広まったものと考えられている (写真は2019年、セビリア)REUTERS/Marcelo del Pozo

<馬ヘルペスウイルス1型(EHV-1)の感染が競走馬の世界で広がり、過去何十年の中で、ヨーロッパでは最も深刻になりそうとも言われ、各国は警戒を強めている......>

今年に入って、馬ヘルペスウイルス1型(EHV-1)の感染が競走馬の世界で広がっている。国際馬術連盟(FEI)は3月1日EHV-1の流行を宣言し、すでに開催中の競技以外、3月28日までに予定されている欧州でのイベントをすべてキャンセルし、厳しい検疫制度を定めた。しかし、その後も感染の報告が続いており、各国は警戒を強めている。

馬ヘルペスウイルス1型(EHV-1)とは?

馬ヘルペスウイルス(EHV)は、馬に感染して流行を起こす。もっとも一般的なタイプはEHV-1とEHV-4で、「EHV-1は、流産、呼吸器疾患、神経疾患を引き起こす」。EHV-4は、といえば、「通常は呼吸器疾患のみを引き起こす。流産の原因となることもあるが、神経疾患は滅多に起こさない」とされる。

EHV-1に感染した馬の中には、重篤な神経疾患から死に至ることもある(コールレーンタイムズ紙)。「多くの場合、発熱が最初の兆候」で、潜伏期間は「2週間から数か月」である。馬同士の飛沫感染のほか、感染した馬との接触で広がるため、「轡やバケツ、タオルなどの共有」には注意が必要だ。また「感染した馬に接触したヒトの衣服、手、装備」も感染経路になりうる(ザ・ホース)。

バレンシア会場で流行発生か?

今回の流行は、スペイン、バレンシアで2月から開催されていた国際障害飛越競技会で広まったものと考えられている。最初に症状を呈したのは、フランスの馬で、バレンシア会場を出てフランスへ帰国してからの発症だった。FEIが流行を宣言した3月頭の時点では、同じ会場にいた馬6頭の死亡がすでに確認されていた。また、同時期、同イベントに集まった750頭以上のうち、約100頭に感染症状が認められていた。

このバレンシアの競技会には、数十か国の馬が集まっていた。多くは、FEIによる宣言以前にすでにバレンシアを後にしており、感染拡大の種はすでに世界に散らばった可能性がある。実際、コロンビアの馬2頭とドイツの馬2頭は、バレンシアの競技会場から直接次の競技会場であるカタールに移動。ただし、2月20日カタールに到着した4頭は、それ以降、隔離されているという。到着時のPCR検査は4頭とも陰性だったが、少なくとも3月3日の時点で、そのうち1頭の検査結果が陽性に転じたことが判明している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

外国勢の米国債保有、9月は減少 日本が増加・中国減

ワールド

米クラウドフレアで一時障害、XやチャットGPTなど

ワールド

エプスタイン文書公開法案、米上下院で可決 トランプ

ビジネス

トヨタ、米5工場に1400億円投資 HV生産強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中