最新記事

海運

世界的なコンテナ不足が、世界の景気回復のブレーキに?

2021年2月12日(金)17時00分
冠ゆき

中国湖北省武漢港のコンテナターミナルで日本行きの貨物船の乗組員の体温を検温する......2020年5月9日 China Daily/REUTERS

<去年の11月以降、世界的なコンテナ不足が各国の輸送費を押し上げている。海運業者に利益をもたらしたが、結果的に世界の景気回復のブレーキとなりかねない状況だ......>

中国からヨーロッパ向けの海上輸送費の高騰が止まらず、秋と比べても4倍にまで膨れ上がっている。もともとはコンテナ不足に端を発した値上がりだが、そのほかの要因も重なり、荷送人の負担はこれまでになく高まっている。アジアでのコンテナ不足は、海運業者に利益をもたらしたが、世界の景気回復のブレーキとなりかねない状況だ。

コンテナ輸送費の高騰

SCFI上海発海上コンテナ運賃は、2月5日に2884 USD/TEU(TEU=輸送コンテナ1単位の20フィートコンテナ換算)を記録。2020年の同時期が950USD/TEUだったことを思うと、その上昇率は相当なものだ。

kanmuri0212ba.jpg

参照:container-news.com

ストラテジー・ロジスティック誌(2/4)は、中国発ヨーロッパ向けに限って言えば、海上輸送費はこの数か月で4倍になったと報じる。フランス北部のテキスタイル業者が挙げる具体的値段によれば、20フィートコンテナの海上輸送費で2020年7月の1000USドルから4400USドルに、40フィートコンテナで2200USドルから1万ドル以上に上昇したという。

欧米ロックダウンで中国からの輸出が急増

海上輸送費の高騰は、まずコンテナ不足が発端だった。パンデミック第一波時の欧米のロックダウンに、いち早く経済活動を再開した中国からの輸出が急増したことで、コンテナのローテーションが回らず、世界的にコンテナ不足に陥った(ザ・マリティム・エグゼキュティブ誌, 12/29)。また、船員の外国港での隔離義務もコンテナ不足に拍車をかけると同時に、「航空貨物の輸送能力が劇的に低下し、海上輸送に頼るのを余儀なくされた」(ラ・トリビュヌ紙, 1/20)ことも大きい。

加えて、「パンデミックが原因で人々の消費スタイルは変化」した。つまり、これまで旅行やコンサート、外食などに費やしていたお金を、物品購入に充てる消費者が増えたのだ。そうしてその物品の「多くがアジアからの輸入品」(同上)だったわけだ。

ストラテジー・ロジスティック誌は、さらに「中国―米国ルートのほうが、中国―ヨーロッパルートよりも実入りが良いため、海運業者がそちらを好む」という事情にも触れている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

2回目の関税交渉「具体的に議論」、次回は5月中旬以

ビジネス

日経平均は続伸で寄り付く、米国の株高とハイテク好決

ビジネス

マイクロソフト、トランプ政権と争う法律事務所に変更

ワールド

全米でトランプ政権への抗議デモ、移民政策や富裕層優
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 7
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 8
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 9
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 10
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中