最新記事

米政治

総ざらいバイデンの外交10大課題 最も変化が大きいのは?

BIDEN’S 10 FOREIGN CHALLENGES

2021年1月29日(金)07時00分
ロビー・グレイマー、エイミー・マッキノン、ジャック・デッチ、クリスティナ・ルー

CLOCKWISE FROM TOP LEFT: RONEN ZVULUN-POOL-REUTERS, JASON LEE-REUTERS, BRENDAN MCDERMID-REUTERS, SERGIO PEREZ-REUTERS, MIKHAIL KLIMENTYEV-SPUTNIK-KREMLIN-REUTERS, MIKHAIL KLIMENTYEV-SPUTNIK-KREMLIN-REUTERS

<中国だけではない、民主党新政権の外交課題。ロシア、イラン、イラク、欧州、サウジ、北朝鮮......。いまだかつてない内憂外患を抱えつつ、一気呵成な政策転換を目指す>

(本誌「バイデン 2つの選択」特集より)

4年前、ホワイトハウスにやって来たドナルド・トランプは最初の100日間で前任者バラク・オバマの政治的遺産を片っ端から粉砕し、逆転させ、「アメリカ第一主義」なるものを打ち出して、先人たちが何十年もかけて超党派で築き上げたアメリカ外交の基本合意をかなぐり捨てたのだった。

今度はそれを、もう一度ひっくり返す番だ。新任のジョー・バイデン大統領は最初の100日間でトランプ時代の主要な政策を破棄し、アメリカが直面するさまざまな安全保障上の脅威に対処すると固く誓っている。

新型コロナウイルス感染症の対策しかり、途方もなく高まってしまった中国との緊張しかり、核兵器を持つ寸前まで来ているイランとの関係しかりだ。
20210202issue_cover200.jpg
オバマ政権で国防長官を務め、当時副大統領だったバイデンと親交があり、今回の政権移行チームにも加わっていたチャック・ヘーゲルによると、バイデン政権はアメリカの外交的利益と諸外国との関係について、すぐにも戦略的な見直しに着手することになる。

「そこでバイデン政権の外交政策の方向が示されるはずだ」とヘーゲルは言う。「もちろん微調整は必要になるが、まずは羅針盤で北極星を見定め(アメリカの立ち位置を見極め)ることだ。この間のアメリカ外交は進むべき方向を見失っていた。個別の取引をいくら積み重ねても、それだけでは外交にならない」

果たしてバイデンとカマラ・ハリス副大統領のアメリカはどこへ向かうのか。主要な外交上の課題を以下にまとめてみた。

magSR20210129bidens10-2.jpg

中国の矛先はアメリカでなく台湾に向かう可能性も(習近平国家主席) JASON LEE-REUTERS

1.駆け引きを要する中国

対中強硬姿勢は続くものと予想される。ただし無用な挑発は控え、同盟諸国との協調に目配りする。

まず注意を要するのは、中国が自国の領土と見なす台湾との関係だ。トランプ政権は先に、アメリカと台湾の外交・軍事当局者間の接触制限を解除すると決めた。中国政府はこれに、どう対応するだろう。

「誰も言及したがらないが、こうした動きを中国側が座視するとは考えにくい」と言うのは、ウッドロー・ウィルソン国際研究センターで米中関係を研究しているルイ・チョン。ただしアメリカに対して何かをするより、台湾に対する圧力を強める可能性が高いとみる。

バイデン政権にとっては、香港での民主派弾圧にどう対応するかも大きな課題の1つとなる。香港では今年に入って、何十人もの民主派議員や活動家が逮捕されている。

バイデンはトランプの対中貿易戦争を引き継ぎ、追加関税をすぐには撤廃しないと昨年12月にニューヨーク・タイムズ紙に述べた。また新政権では「中間層のための外交政策」を展開し、知的財産権の侵害からアメリカの雇用と産業を守ると訴えてきた。

バイデン政権の対中政策を形作る人物はカート・キャンベル。ホワイトハウスでインド・太平洋問題の調整役を担う予定だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

原油先物は続伸、イランがイスラエル攻撃準備との報道

ビジネス

インテル、第4四半期売上高見通しが予想上回る 株価

ビジネス

アップル、見通しさえず株下落 第4四半期は予想上回

ワールド

米裁判所、マスク氏訴訟の手続き保留を決定 大統領選
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される
  • 2
    「まるで睾丸」ケイト・ベッキンセールのコルセットドレスにネット震撼...「破裂しそう」と話題に
  • 3
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 4
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 5
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 6
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 7
    天文学者が肉眼で見たオーロラは失望の連続、カメラ…
  • 8
    中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布さ…
  • 9
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 10
    自爆型ドローン「スイッチブレード」がロシアの防空…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 5
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 7
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 8
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 9
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中