最新記事

新型コロナウイルス

フィンランドの空港で犬の嗅覚による新型コロナ感染者検知がはじまった

2020年9月28日(月)17時20分
松岡由希子

PCR検査では検出できない、発症前の感染者を特定できる...... solidcolours-iStock

<フィンランドのヘルシンキ・ヴァンター国際空港は、犬の嗅覚によって新型コロナウイルスに感染した渡航者を見つけ出す実証実験を開始した...... >

北欧フィンランドのヘルシンキ・ヴァンター国際空港は、2020年9月22日、新型コロナウイルス感染症への水際対策として、犬の嗅覚によって新型コロナウイルスに感染した渡航者を見つけ出す実証実験を開始した。

ほぼ100%の精度で新型コロナウイルスの感染者を嗅ぎ分けた

この検査は、フィンランド国外から到着し、参加に同意する渡航者のみを対象に、匿名で実施される。渡航者と犬が直接接触することはなく、渡航者が検査用の布で皮膚を拭き取り、専用カップにこれを入れると、犬が待機するブースに運ばれ、布に付着した検体を嗅がせる。

犬は、新型コロナウイルスを検知すると、吠えたり、足を掻いたり、横になったりといった身体的なサインを示す。一連の検査は1分以内に完了し、陽性となった渡航者は、空港内に設置された専用窓口に移動して、PCR検査を受けることとなっている。

この実証実験に先だってヘルシンキ大学で実施された予備テストでは、犬がほぼ100%の精度で新型コロナウイルスの感染者を嗅ぎ分けた。

HEALTH-CORONAVIRUS-FINLANDa.jpeg予備テストでは、ほぼ100%の精度で新型コロナウイルスの感染者を嗅ぎ分けた REUTERS/Attila Cser

PCR検査では検出できない、発症前の感染者を特定できる

独ハノーバー獣医科大学の研究チームが7月23日に学術雑誌「BMCインフェクシャス・ディジーズ」で発表した研究論文でも「検体1012点を犬に嗅がせたところ94%の精度で新型コロナウイルスの感染者を検知した」ことが示されている。同様に、仏パリ東大学の研究チームも「犬が95%の精度で新型コロナウイルスの感染者を判別した」との未査読の研究論文を公開している。

新型コロナウイルスの検知には、PCR検査で1800万個の分子を要するのに対し、犬はわずか10〜100分子で足り、少量の検体でも感染の有無を判別できる。また、PCR検査では検出できない、発症前の感染者を特定できるのも利点だ。

これまでに犬が新型コロナウイルスに感染した症例は確認されているものの、中国農業科学院の研究チームが5月29日に学術雑誌「サイエンス」で発表した研究論文によると、感染による健康被害は認められず、他の動物にウイルスを感染させることもないという。

UAE、サウジアラビア、フランス、豪州、ブラジルでも検討がはじまる

この実証実験に向けて、犬10匹が、嗅ぎ分けの訓練に特化したフィンランドのドッグトレーニング組織「ワイズノーズ」から、新型コロナウイルスの感染者を嗅ぎ分けるための特別な訓練を受けた。習得に要する時間は犬によって異なるが、なかでも、8歳のグレーハウンド系ミックス犬は、わずか7分でこのスキルを身につけた。

ヘルシンキ・ヴァンター国際空港では4ヶ月間にわたって実証実験を行ったのち、その結果を検証する方針だ。同様に、アラブ首長国連邦(UAE)ドバイ国際空港でも、7月30日、新型コロナウイルスに感染している渡航者を犬の嗅覚によって見つけ出す取り組みが開始されたほか、サウジアラビアやフランス、豪州、ブラジル、チリでも、新型コロナウイルスの感染者をより速く、安全に検知する手段として、その導入が検討されている

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「今年注目の旅行先」、1位は米ビッグスカイ
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 5
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 9
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 10
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中