最新記事

新型コロナウイルス

米南部の感染爆発は変異株の仕業?

Coronavirus Becoming More Infectious in Mutant Form

2020年6月25日(木)16時30分
メーガン・ルース

経済再開のタイミングで変異が襲った? narvikk/iStock

<感染力の強い変異型ウイルスの出現・増殖を研究チームが報告>

アメリカで再び猛威を振るっている新型コロナウイルスは、感染力の強い変異型と考えられる──フロリダ州のスクリップ研究所のチームがそんな衝撃的な解析結果を発表した。

この論文は今月オンライン上で発表され、現在ピアレビュー(査読)を受けている。

「私たちの研究で、変異したウイルスははるかに効率的に細胞の培養システムにとりつくことが分かった」と、論文の執筆者の1人ヘリョン・チェは本誌に語った。

「変異により、ウイルスの周りのスパイク(突起)タンパク質の安定性が高まり、スパイクタンパク質の数が増えた。スパイクタンパク質は、標的細胞にとりつくために欠かせない役目をするので、より安定したスパイクタンパク質を多く持つよう変異したウイルスは、当然ながらより簡単に標的細胞と結合し、細胞内に入り込む」

プレスリリースによれば、チェと共同執筆者のマイケル・ファーザンは20年近くコロナウイルスを研究してきた。

新型コロナウイルスが発生すると、世界中の研究者がワクチンの開発を進めるなか、2人はこのウイルスの弱点を見つけるため、詳細に構造を調べてきた。

淘汰圧で感染力増す

チェによれば、時間が経つにつれ、この変異株の割合がしだいに多くなり、それに伴って新型コロナウイルスの感染力もしだいに強まったという。国際的なゲノム配列のデータベース「ジェンバンク」に今年5月までに報告された新型コロナウイルスの塩基配列を見ると、70%にこの変異があるが、その3カ月前の段階では、この変異は全く見られなかったと、チェらはプレスリリースで述べている。

「時間が経つにつれ、新型コロナウイルスは細胞により強く結合し、細胞内に入り込むまで離れなくなる能力を獲得した」と、プレスリリースには書かれている。「ウイルスに淘汰圧が働いた結果、この変異を持つタイプが多くなった」

それにより新型コロナウイルスは発生初期に比べ、人から人へと感染しやすくなったと、研究チームは見ている。

チェは先日、フロリダ州マイアミに本拠を置くテレビ局WSVNの番組に出演、ここ数週間で新型コロナウイルウスの感染者が爆発的に増えたフロリダ州では、変異株が猛威を振るっていると考えられる、と話した。フロリダ州保健省の発表では、6月24日午前までに州全域で10万9014人の感染が報告され、死者は3281人に上った。

<参考記事>スウェーデンが「集団免疫戦略」を後悔? 感染率、死亡率で世界最悪レベル
<参考記事>傲慢な中国は世界の嫌われ者

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米アメックス、感謝祭週の国内小売支出が9%増加=C

ビジネス

午前の日経平均は続落、朝高後に軟化 ソフトバンクG

ビジネス

米経済金融情勢の日本経済への影響、しっかり注視=米

ワールド

メキシコ、中国などに最大50%関税 上院も法案承認
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 8
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 9
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 10
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中